大分県佐伯市、4中学校がAI自動採点導入 テスト採点時間を大幅短縮し教員負担軽減

2025年9月3日、大分県佐伯市の4つの中学校が校内テストにAI自動採点システムを本格導入したことが報道された。
従来の3分の1から半分程度まで採点時間を短縮でき、業務効率化や教員の働き方改革に寄与している。
佐伯市内4中学でAI自動採点が本格稼働
佐伯市内の佐伯城南、鶴谷、昭和、佐伯南の4中学校は、本年度から校内テストに自動採点システムを導入した。答案用紙をスキャンし、人工知能(AI)が記号や単語、数式を自動判定する仕組みである。
記述式問題の完全対応は難しいものの、画面上で各生徒の解答を一覧表示できるため、採点作業全体の効率は格段に向上したという。
佐伯城南中では2023年2学期から試験的に運用を開始し、現在は全教科で活用している。
数学や理科といった記号や数式が多い科目では特に効果が大きく、100人分の答案採点に要していた3時間が1時間程度に短縮された。記述問題の多い国語でも作業時間は約半分に削減されている。
採点の最終確認は教員が行うが、自動判定の精度は高く、誤判定は文字が薄い場合や乱雑な場合に限られるという。数年前までは授業や部活動の合間に手作業で丸付けをしていたが、現在は大幅に負担が軽減された。
理科担当の塩月陽教諭は「採点の時間が削減できたことで、他の業務に取り組む余裕が増えた。ワークライフバランスの面でも役立っている」と語ったという。
佐伯市教育委員会も「十分に活用し、子どもと向き合う時間をより一層つくってもらいたい」と話しているとのことだ。
自動採点の定着へ 利点とリスクのバランス
AI自動採点の導入は、教員の採点業務を大幅に効率化し、労務負担を軽減する効果を示している。これまで数時間を要していた作業が短縮され、その時間を授業準備や生徒との関わりに振り分けられる点は、教育の質の向上に直結する利点といえる。
また、採点精度が高水準に保たれていることは、導入への安心感を与えている要素でもある。
一方で、課題も残る。
現状では記述式問題を完全に自動判定できないため、国語や社会科では依然として教員の目による確認が不可欠である。読み取り精度が向上すればさらなる効率化が進むが、AIが誤判定した場合の影響や、生徒の表現力評価をどの程度自動化できるかという議論は今後も続くだろう。
また、システム導入に伴うコストや、データ管理のセキュリティ面への配慮も避けられない。生徒情報を扱う以上、個人情報保護や外部不正アクセスへの対策が欠かせない。
今後は自治体レベルでの費用対効果の検証や、導入校以外への展開を見据えた議論が進むとみられる。
AIはあくまで教育現場を補完する存在であり、最終的な判断は教員の役割に委ねられる。
自動採点が定着すれば、教師が本来の教育活動に注力できる環境が整い、教育の質と教員の働き方改革が両立する可能性があると言える。
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