日本に核融合発電の波 米CFSと三井物産ら12社が資金連携

2025年9月3日、米核融合開発企業Commonwealth Fusion Systems(CFS)は、三井物産や三菱商事、NTTなど日本企業12社から総額8億6,300万ドル(約1,184億円)の出資を受けたことを受け、会見を開いた。
会見は東京で開かれ、日本市場を核融合発電の拠点に位置付ける姿勢を示した。
CFS、日本企業の出資で核融合開発を加速
CFSはトカマク型(※)の核融合炉を開発する米国のスタートアップで、2030年代前半に商業炉「ARC」を米バージニア州で稼働させる計画を掲げる。
今回の資金調達は多くの日本企業が参画し、同社の総調達額は約30億ドルに到達。民間核融合分野で世界最大規模となった。
現在進行中の核融合実験炉「SPARC」は、ボストン郊外で建設が進められており、完成度は7割に到達している。
2年以内の稼働を予定し、まずは小都市を賄える電力量の100MWの発電能力を実証する予定だ。
続く「ARC」では400MWを供給し、中規模火力発電所に匹敵するカーボンフリー電力を目指す。
CFSはすでに高温超伝導磁石の実証に成功しており、その材料は日本のフジクラが供給した。この成果が開発加速の鍵となったとされる。
東京の会見に出席したマクガードCEOは「日本は重要な市場であり、核融合技術の発展のためには非常に大切な拠点となる」と強調した。
出資した日本企業は、エネルギーや通信、金融、インフラなど多岐にわたり、AIやデータセンター向け電力需要の拡大を見据えた動きとみられる。
実際にGoogleは「ARC」の最初の電力購入先となる予定であり、AI産業を核融合エネルギーが支える構図が描かれつつある。
三井物産の内田氏は「核融合発電は日本のエネルギー戦略として重要な技術だが、単独での実現は難しい。日本の技術も還元しながら双方向で発展していきたい」と述べ、双方向的な発展を強調した。
※トカマク型:磁場でプラズマを閉じ込め、核融合反応を維持する方式。国際熱核融合実験炉(ITER)などでも採用される主流技術。
日本企業出資が拓く核融合の可能性
CFSが日本企業12社から巨額出資を受けたことは、核融合発電を現実的なエネルギー源へ近づける動きとして注目できる。
SPARCが2年以内に100MW級の実証を予定し、次段階のARCで400MW供給を目指す流れは、技術から社会実装へと進む道筋を明確にするものだと考えられる。
日本企業が参加した意義は、フジクラが供給した超伝導磁石の成功に象徴されるように、既に技術的成果を提供している点にありそうだ。
さらにエネルギー、通信、金融と多分野の企業が加わったことは、AIやデータセンター需要を視野に入れた広範な利害一致といえる。
脱炭素と産業競争力強化の両立が期待できる一方、2030年代前半の商業炉稼働には依然として技術的リスクやコストの壁が残ると考えられる。
とはいえ、Googleが最初の電力購入先になる予定であることは商業化の確率を高め、日本を核融合の拠点とする展望に現実味を与えている。
今回の動きは、日本企業が世界のエネルギー転換に主体的に関与する契機となるのではないだろうか。