グーグル、オンプレミス版の「Gemini」を提供開始 企業向けAI導入の課題解決を狙う

2025年8月28日、米グーグルは大規模言語モデル「Gemini」のオンプレミス版の提供を開始すると発表した。
クラウドに依存せず自社のデータセンターにGeminiを導入でき、セキュリティや管理機能を強化した法人向けの取り組みとして注目だ。
グーグル、オンプレ版GeminiをGDC経由で提供開始
グーグルは米国時間8月28日、企業向けに「Gemini」シリーズのオンプレミス提供を開始した。
これはグーグルのハードウェアソリューションであるGDC(Google Distributed Cloud)の仕組みを活用し、自社データセンターに直接AIを導入可能とするものだ。
これにより、機密情報を外部クラウドに依存せずに処理でき、情報管理上の懸念を解消できると期待されている。
今回の発表は、親会社アルファベットが4月に予告していた計画の具体化である。
グーグルは「最も高性能なモデルを、顧客のデータセンターに直接投入することが可能になる」と強調し、導入第1号としてシンガポールのCSITやGovTech、日本ではKDDIやLiquid C2の名前を挙げた。
オンプレミス版Geminiは、大企業における翻訳や文書解析、24時間体制の顧客対応、ソフトウェア開発支援など、多様な業務活用が可能だ。
また、有害コンテンツの自動フィルタリングや法規制準拠といった安全対策も強化されている。
さらに、Vertex AIやAgentspaceなどのAI基盤、NVIDIA Blackwell 300 GPUなど最新ハードウェアとの連携も提供範囲に含まれる。
グーグルはクラウドの利便性をオンプレ環境でも享受できることを強調しており、「フルマネージド型のGeminiのエンドポイントが、顧客やパートナーのデータセンター内で利用可能で、シームレスでゼロタッチのアップデート体験が得られる」としている。
オンプレAIの普及は加速か 利便性と高コストのはざまで
オンプレ版Geminiの登場は、AI導入を阻む要因を解消する有力手段となり得る。
特に、金融や政府機関のように高いセキュリティ要件を持つ分野では、クラウド依存への懸念が小さくなることで導入が加速すると考えられる。
企業にとっては、既存システムとの統合を進めやすくなる点も大きな利点だ。
一方で、導入コストや運用負担が無視できない。オンプレミス環境の構築には専用GPUや高度なネットワーク管理が不可欠であり、初期投資は相当規模に及ぶとみられる。
加えて、AIモデル自体の更新や最適化を継続的に行う必要があるため、専門知識を持つ人材確保も課題となる。
オンプレはセキュリティ重視の用途に、クラウドは拡張性重視の用途に強みがあり、グーグルの狙いは、こうした多様な需要を捉えることにあると考えられる。
今後は他の大手クラウド事業者も、同様のオンプレ対応を強化する可能性もあるだろう。