新潟県見附市、AI通訳「Sentio-ポケトークforスクール」導入で授業支援

2025年8月28日、新潟県見附市教育委員会がAI同時通訳「Sentio-ポケトークforスクール」および通訳機「ポケトーク端末」を導入したと、ポケトーク株式会社により発表された。外国籍児童生徒の増加を背景に、授業や日常会話での多言語対応を強化する狙いがある。

「ポケトークforスクール」で外国籍児童の学習環境を支援

「Sentio-ポケトークforスクール」は、専用端末を必要としないウェブブラウザ型サービスで、教員が話す内容をリアルタイムで75言語に翻訳して生徒が所持する端末に表示することができる。これにより、外国籍児童や日本語を母語としない生徒への授業支援が飛躍的に向上すると期待される。

文部科学省の調査によれば、2023年度時点で日本語指導が必要な児童生徒は全国で69,123人に上り、2021年度から18.6％増加している。中でも、外国籍児童生徒の増加率は21.2％に達しており、各自治体における言語支援の整備が急務となっている。

見附市でも同様の課題を抱えており、今回の導入はその対応策の一環として位置付けられる。市は授業にとどまらず、教員や友人との日常会話など、学校生活全体での言語支援を視野に入れ、より包括的な多言語対応環境の構築を目指している。

多言語対応の裾野拡大へ　授業外の活用と教育現場の変革にも期待

今回の導入は単なる授業支援だけではなく、教職員と児童生徒間の相互理解を促進させ、学校全体での多言語環境の整備に繋げる可能性がある。異文化コミュニケーションを日常的に促進することで、児童の安心感や学習意欲の向上にも寄与すると見られる。

ウェブブラウザ型サービスである「Sentio-ポケトークforスクール」は、端末を選ばず柔軟な導入が可能という点で、費用対効果にも優れるとみられる。これにより、自治体単位でのスピーディな展開が期待されるが、一方で実際の現場では、使用者のインターネット環境や操作リテラシーの格差が課題となる懸念も考えられる。

また、通訳結果の誤認識や文化的背景への配慮など、AI通訳技術の限界にも留意が必要である。今後は教職員への研修や適切なガイドライン整備が求められ、AI支援と人的支援を両立させる教育体制の構築が重要になるだろう。

見附市の取り組みは、今後多言語環境に適応した教育行政のモデルケースとして他自治体にも波及していく可能性が高い。言語の壁を超える技術の社会実装として、その効果と課題の両面に注目が集まるだろう。