米商務省、GDPデータを9種ブロックチェーンで公開 透明性を強化

2025年8月28日、米商務省は実質国内総生産(GDP)データをブロックチェーン上に公開すると発表した。
連邦機関として初の取り組みであり、経済統計の透明性と信頼性を高める実証実験として注目できる。
商務省、9種類のブロックチェーンでGDPデータ公開
米商務省は、2025年7月分のGDPデータ改定値を複数のブロックチェーンに記録した。
米国経済分析局(BEA)によると、同月のGDPは年率換算で3.3%の増加となっており、その一部の数値と公式ハッシュ値が公開対象になった。
対象となったのは、ビットコイン(Bitcoin)、イーサリアム(Ethereum)、ソラナ(Solana)、トロン(TRON)、ステラ(Stellar)、アバランチ(Avalanche)、アービトラムワン(Arbitrum One)、ポリゴンPoS(Polygon PoS)、オプティミズム(Optimism)の9種類のブロックチェーンである。
データ配信はオラクルサービスのチェーンリンク(Chainlink)とピス(Pyth)が担い、コインベース(Coinbase)、ジェミナイ(Gemini)、クラーケン(Kraken)といった暗号資産取引所も、取引手数料用の暗号資産調達で協力した。
米商務省は今後、GDP以外の統計や他のブロックチェーンへの拡大も視野に入れている。
この発表を受け、市場でも即座に反応が見られた。
Pythトークンは50%超の急騰、チェーンリンク(LINK)も3%以上値上がりするなど、関連プロジェクトの価格が上昇した。
商務省のハワード・ラトニック長官は、「米国の経済的真実を不変で世界的にアクセス可能な形にし、米国をブロックチェーン首都として確立する」と強調し、ブロックチェーン関連でのリーダーシップを取っていく考えを述べた。
透明性向上と経済活用に期待 課題も
経済統計をブロックチェーンに記録する試みは、改ざん耐性の高さから透明性と信頼性を強化する手段として有効とみられる。
期待される具体的な効果は多岐にわたる。
政府統計への国際的アクセスが容易になることで、投資家や研究者はより正確な情報に基づいた意思決定を行えるようになると考えられる。
また、透明性の確保は政策への信頼向上にもつながるだろう。
さらに、暗号資産市場においては公共データの流通を通じて新しい金融サービスが生まれる可能性もある。
一方で、課題も残る。
複数のブロックチェーンを利用することによるコスト負担や、技術標準の統一が進まなければ、データの分断を招く恐れがある。
また、公開範囲の拡大が個人情報や国家機密に抵触しないかという懸念も存在する。
今回の実証は、米政府のデータ公開方針を象徴する重要な一歩となりそうだ。
今後の展開次第では、他国政府や国際機関にも波及し、経済統計の新たな共有モデルとして広がる可能性もある。