富士通、ヘルスケア特化型AIエージェント基盤を発表 医療現場の業務を自動化へ

2025年8月27日、富士通はヘルスケア業界に特化したAIエージェント実行基盤を構築したと発表した。
医療機関の経営改善と医療従事者の負担軽減を目的としている。
医療費増加と人手不足に対応するAI基盤を整備
富士通が新たに発表したAIエージェント(※)実行基盤は、医療機関における業務オペレーションの改善を目的としたものである。
中核となるのは複数のAIサービスを目的によって自動で組み合わせる「オーケストレーターAIエージェント」だ。
このエージェントは、受付や問診、診療科分類といった複数のAIエージェントを連携させ、複雑な業務を自律的に処理する仕組みを備える。
これにより、患者受付から診療までの一連の流れを自動化できるとしている。
背景には、日本の医療費が年々増加している現状がある。
2022年度には46兆円に達し、そのうち約半分が人件費に、さらに約3兆円が事務作業に費やされており、AIによる効率化が求められている。
富士通はこれまでに培ったヘルスケア領域の知見をもとに、業務特化型AIエージェントを提供する。
これらはデータ構造化や相互運用監視など多様な機能を備え、富士通のヘルスケア向けデータ利活用基盤であるHealthy Living Platform上に統合される。
さらに、国内外のパートナー企業が開発するAIエージェントも組み込むことで、医療現場全体の迅速な変革を後押しする。
なお、今回の基盤はNVIDIAの支援を受けて構築されている。
富士通は2025年中に国内外の医療機関やパートナーと連携し、オーケストレーターAIエージェントの有効性を検証する方針だ。
今後は、具体的な業種特化型AIエージェントの開発を加速させ、事業化に踏み切ることで、持続可能な医療システムの実現に寄与するとしている。
※AIエージェント:特定の業務やタスクを自律的に遂行するAIシステムのこと。オーケストレーターAIエージェントは複数のAIを統括し、連携を最適化する役割を担う。
医療分野へのAI利用の可能性とリスク
AI基盤導入により、医療従事者は本来の診療やケアに専念できるようになるだろう。
経営者も、人材をより効果的に配置できるようになり、収益性と労働環境の改善を図れそうだ。
患者にとっても、待ち時間の削減や、個別の状態に応じた適切な医療サービスを受けやすくなる点が大きな利点になると思われる。
一方で、AIに医療業務を任せることへのリスクも顕在化するかもしれない。
医療分野は、小さなミスが健康や生命を左右する可能性もあるため、データの取り扱いや判断プロセスの透明性、そして患者対応における倫理的課題は引き続き議論の対象となる可能性がある。
それでも、属人化した業務を解消し、標準化と効率化を同時に進められる点は、日本の医療にとって大きな前進となると考えられる。