NEC、事前学習不要のAIで広域現場の作業行動を可視化

2025年8月27日、NECは複数のカメラ映像から広域作業現場の作業行動を、事前学習なしでデータ化できるAI技術を開発したと発表した。
物流や製造、建設現場への即時導入が可能で、2026年度の実用化を目指す。
NEC、複数カメラで作業行動を即時データ化するAI開発
NECが開発した新技術の特徴は、映像を事前に収集・学習させることなく、現場に合わせて即座に利用できる点にある。
仕組みとしては、視覚言語モデル(VLM ※)を活用し、「荷物を棚から取り出す」「台車を押す」といった行動をテキストで入力するだけで認識可能になる。
従来必要だったアノテーションやモデル学習を省略でき、導入期間の大幅な短縮が見込まれる。
また、複数のカメラを設置した場合も、作業者を外観や服装に依存せず、デジタルツイン空間上で三次元座標や移動パターンをもとに同一人物を高精度で識別できる。
これにより、広域な現場全体で作業行動を長時間にわたって追跡・統合することが可能となる。
NECは物流倉庫や工場、建設現場での適用を想定し、人材不足が深刻化する産業分野において効率的な人員配置や業務改善を支援するとしている。
実用化は2026年度を目標としている。
※視覚言語モデル(VLM):テキストと画像を結びつけて解析するAI技術。入力された文章を数値化し、映像や画像の特徴量と照合して認識する。
効率化の切り札となる一方で導入負担も懸念
NECの新技術は、従来のAIによる作業認識が抱えていた準備工程の煩雑さを解消し、現場全体の即時可視化を可能にする点で大きな意義がある。
人手不足が慢性化する産業現場では、省人化と効率化の両立を実現する切り札となり得る。
特に、作業の見える化による最適な人員配置は、生産性の向上や労働環境改善にも寄与する可能性が高い。
一方で、複数カメラの設置や維持管理、データ処理に伴うコストは導入障壁となり得る。
大規模事業者にとっては投資効果が期待できる一方、中小規模の現場では負担感が強まると考えられる。
また、従業員が常時監視されることへの心理的抵抗やプライバシーへの懸念も無視できない。
今後は、導入コストを下げつつ、透明性を持った運用ルールを確立することが普及のカギになると考えられる。
NECが目指す2026年度の実用化が実現すれば、広域現場の最適化技術の新たな標準として浸透する可能性があるが、実際の定着度は利用企業の投資判断と社会的受容性に左右されるだろう。