ネイル企業コンヴァノ、ステーブルコイン開発発表 暗号資産で金融領域参入

2025年8月27日、東証グロース上場のネイルサロン運営企業コンヴァノは、法定通貨連動型ステーブルコインの企画・開発に着手すると発表した。
国内取引所との協業を前提に、資産裏付けや規制対応を組み込んだ設計で実証実験を進める予定だ。
コンヴァノ、金融規制対応を前提に発行体制を構築
ネイルサロン「FASTNAIL」を展開するコンヴァノが、金融領域への新規参入を打ち出した。
同社はステーブルコイン(※)発行にあたり、発行体の適格性や準備金の分別管理、1:1での償還体制を前提に設計を進める方針を明らかにした。
さらに、マネーロンダリング防止(AML)やテロ資金供与対策(CFT)、トラベルルールへの準拠を盛り込み、電子決済手段交換業者による適正な仲介を組み込むと説明している。
準備金には日本国債(JGB)など高流動性・高信用度資産を採用し、満期分布やデュレーションの管理に加え、金利1bps(0.01%)変動時の価格変化やカストディ先、カウンターパーティのリスクも精査する。
さらに、流動性カバレッジやストレステストをKPIに設定し、発行・償還や残高の突合、定期レポーティングを通じて透明性を担保する体制を整える方針だ。
協業先には、国内暗号資産取引所「コインステート」を運営するフィンクス・ジェイクリプト(FINX JCrypto)が想定されている。
フィンクスの親会社アヴニール・グループは、米国公的開示でブラックロックのビットコインETF(IBIT)を約1,655万株保有していることが判明しており、アジアでも有数の規模を誇る投資実績を背景に持つ。
※ステーブルコイン:米ドルや円など法定通貨に価値を連動させる暗号資産。価格変動を抑えることで、決済や送金の安定性を確保する目的で利用される。
新規事業の波及効果 金融と美容業の架け橋となるか
コンヴァノは今回の事業立ち上げに5,000万円を投じ、設計やPoC(概念実証)、パイロット運用の可否判断に必要な人材確保と準備に充てるとしている。
美容業界で培った顧客基盤を持つ同社が金融領域へ進出することは、既存事業との差異が大きいだけに注目を集めそうだ。
異業種からの参入は、規制環境を健全化させる契機になり得ると予測できる一方で、金融リスク管理のノウハウを持たない企業がどこまで対応できるかは懸念される。
とりわけ、ステーブルコインは利用者保護や透明性への要求が高いため、規制動向の影響も受けやすいと思われる。
同社はすでに「21,000ビットコイン財務補完計画」を策定しており、2027年3月末までに21,000BTC(発行上限の0.1%)を保有する長期KPIを掲げている。
美容サービス企業でありながら暗号資産を中核とする財務戦略を打ち出す姿勢は、伝統的な小売業モデルからの転換を示唆していると言える。
ステーブルコイン発行は、安定した決済手段の確立と同時に、新たな顧客接点やブランド価値の拡大を狙う取り組みとも解釈できる。
金融と美容という異色の組み合わせがどのようなシナジーを生むのか、今後の展開が注目される。