電通デジタル、生成AI広告ツール公開 AIコピーライターと連携

2025年8月26日、電通デジタルは電通と共同で、独自の生活者意識調査データを活用し、広告メッセージのコンセプト提案までを担う生成AIツールを開発したと発表した。AIコピーライター「AICO2」と連携し、ターゲット探索からコピー自動生成までを短時間で実現する。
電通独自データ基盤と生成AIで広告設計を高速化
電通デジタルが発表した新ツールは、電通のデータ基盤「COSMOS DATA(コスモスデータ)」(※)に蓄積された生活者パネル情報をもとに設計されている。137のカテゴリー、計4915銘柄(2025年8月時点)に関する購入・使用意向データを活用し、任意ブランドに対して適切なターゲット層を自動的に抽出。そのうえで選定したターゲットに響く複数の広告メッセージコンセプトを出力する仕組みだ。
生成AIは、電通の戦略プランナーが過去に記述したメッセージコンセプトを事前学習しており、精度の高いアウトプットを可能にしている。従来は熟練プランナーによる分析とコンセプト策定に数時間を要していたが、このツールを使うことで数分で複数パターンの分析と提案が完了する。
さらに、AIコピーライター「AICO2」との連携により、広告メッセージの基盤となるコンセプトからターゲットごとのコピー自動生成までを一気通貫で実現する。最終的な仕上げは人間の戦略プランナーが担当し、完成度を高める体制を維持する点も特徴的だ。
両社は2015年から広告制作への生成AI活用を研究しており、初代「AICO」に続く最新の取り組みとして注目される。
※COSMOS DATA:電通独自の生活者パネルデータ基盤。消費者の購買・使用意向やライフスタイルデータを蓄積し、ターゲット分析や広告戦略立案に活用される。
広告制作の効率化と質の両立 市場競争力への波及は
今回のAIツール導入は、広告制作のスピードと効率を大きく引き上げる可能性がある。これまで数時間かかっていたターゲット分析とコンセプト策定を短時間で行えることは、企業の広告戦略立案のサイクルを加速させるだろう。特にWeb3やD2Cブランドなど、スピードが重視される市場では大きな武器になると考えられる。
一方で、AIが出力するメッセージが過度に均質化するリスクも否定できない。電通デジタルは「人間のプランナーによるブラッシュアップ」を強調しており、最終的な質の担保は人とAIの協働に委ねられる。広告業界では「AIがアイデアの土台をつくり、人間が磨き上げる」という分業が今後さらに進む可能性が高い。
市場競争力の観点では、広告制作の高速化と精度向上が企業のマーケティングROI改善につながると期待される。特に大規模キャンペーンだけでなく、地域や属性ごとに最適化されたコピーを同時展開できる点は、これまでコスト的に困難だったパーソナライズ戦略を可能にする。
今後は、広告代理店だけでなく、ブランド側のインハウス活用が広がるかも焦点になる。生成AIの浸透は、広告業界の制作フローそのものを再定義しつつあると言える。