三菱電機、複数専門家AIと即時対話可能な新サービスを開始

2025年8月20日、三菱電機は自社の共創拠点「Serendie Street Yokohama」で、複数の専門家AIと瞬時に対話できる「対話型マルチAIエージェントサービス」の運用を開始したと発表した。分野横断的な知見を統合し、課題解決や事業創出を加速させる狙いだ。

複数専門家AIで課題解決と事業創出を同時支援

「対話型マルチAIエージェントサービス」は、利用者が複数の専門家AIを選び、最適なチームを即座に構成できる点が特徴である。ビジネスや技術の多様な課題に迅速に対応し、複数領域にまたがる知見を活用することを目的としている。

利用者はライブラリに登録された「電力事業領域エージェント」や「FA事業領域エージェント」などを選択し、目的に応じてカスタムチームを編成できる。
これにより、従来は時間やコスト面で困難だった多領域専門家チームの議論を、仮想空間上で瞬時に行えるようになった。

さらに、社内外の知見をAIエージェントとして登録することも可能で、現実には難しい専門家チームの仮想再現も実現できる。こうした柔軟性により、顧客やパートナーとの協業を通じた新たなビジネスモデルやサービス創出が加速されるという。

三菱電機は本サービスを社内ナレッジ共有や技術革新に活用するとともに、社会課題解決型の事業開発にも広く適用していく計画である。AI技術を中心に据え、業種横断的な知識連携のハブとして拠点価値を高める方針だ。

マルチAI活用の可能性と課題、企業競争力への影響

本取り組みは、多領域専門知識の組み合わせによって従来の意思決定プロセスを加速できる点に大きな意義がある。
人材不足や開発コストの高騰が課題となる中、物理的会議や専門家調整の手間を省き、迅速な仮説検証が可能になるのは企業にとって魅力的だ。

社内外のデータ資産を統合活用できる点も強みである。
異なる企業文化や業種の知識をAIが仲介することで、組織の垣根を越えたコラボレーションが容易になり、競争優位性の高いサービスや製品開発が期待される。

一方で、意思決定の透明性やデータ取り扱いのリスクは避けられないだろう。
AI提案の根拠が不明瞭な場合、利用者の信頼性が損なわれる可能性があり、情報管理やセキュリティの強化が必須となる。また、判断をAIに過度に依存すると人間側の判断力低下も懸念される。

今後は、企業が自社ナレッジや外部知見をいかにAIに組み込むかが競争力の差を生むと考えられる。特に、専門家AIの設計次第で提案の質が左右されるため、運用体制の整備が重要となるだろう。