GenerativeX、「開発係長」を提供 社内利用可能なコーディングAI

2025年8月22日、国内のAI関連企業GenerativeXは、企業内で安全に利用できるコーディング支援AI「開発係長」の提供を開始した。生成・修正・検証などの一連の開発工程を社内環境で完結できる仕組みが特徴で、大企業を中心に導入が進む可能性がある。
社内完結型のコーディング支援AI クラウドやTeamsと連携
GenerativeXが発表した「開発係長」は、企業が保有するセキュリティ確保済みのオンプレミス環境やクラウド基盤内で運用できる生成AI型のコーディング支援サービスである。
ユーザーがメールやMicrosoft Teamsを通じて自然言語で指示を送り、それに従ってAIエージェントがコードの生成・修正・テスト・プレビューまでを自動実行する。
実行処理はユーザーのローカルPCではなく、社内に設置されたSaaS上で行われ、他ユーザーとの隔離が担保された専用コンテナー(※)上で稼働する構造になっている。
さらに社内のコード管理システムやドキュメントとの統合にも対応し、開発ガイドラインに準拠したプロンプト最適化、セキュリティ脆弱性の自動検査、並列処理なども実行可能だ。COBOLなどのレガシー言語にも対応し、幅広い技術スタックで運用できる点も強みとなる。
GenerativeXは生成AIの開発支援ツールに対するニーズが高まっている一方、大手企業においては情報漏洩リスクへの懸念から、外部サービスの利用が制限されている実情を指摘。
今回の「開発係長」は、そうした制約の中でもAIの導入を進める手段として設計されたと説明している。
※コンテナー:仮想環境の一種で、他のシステムから隔離された状態でアプリケーションを実行できる仕組み
生成AIの社内活用を後押し 開発現場の効率化と統制両立へ
「開発係長」が提供する仕組みは、生成AIの恩恵を享受しながら企業のセキュリティポリシーや内部統制と両立させる実装モデルとして注目できる。
企業にとっての最大の利点は、社内システムと閉域的に接続できる構造によって機密情報の外部漏洩リスクを最小限に抑えつつ、開発の高速化とコスト削減を実現できる点にある。従来生成AIの導入が進まなかった業種や部門でも、社内に閉じた運用が可能となることで採用のハードルが下がると見られる。
一方で、AIによる自動生成コードの品質や説明責任への対応も課題として残ると考えられる。
プロンプト設計やレビュー体制の整備が不十分なまま運用されれば、逆に保守性やセキュリティに影響を及ぼすリスクもある。
今後は、企業ごとの開発体制や運用フローに応じたカスタマイズ性や、他部門との連携機能の拡充が鍵となるだろう。生成AIを活用した「開発の民主化」が進む中で、セキュアかつ実務的な導入モデルとして、「開発係長」の動向には注目が集まりそうだ。