スペースシフト、生成AIと衛星データを接続 自然言語で解析可能な新ツールを公開

2025年8月19日、スペースシフト(東京都千代田区)は、生成AIサービス向け衛星データ解析ツール(ベータ版)の提供を開始した。
ユーザーは自然言語で指示を与えるだけで、衛星データの変化検知や報告が可能になる。
衛星データ解析を自然言語で指示できる環境を提供
スペースシフトはこれまで、衛星データを活用したAI解析に注力し、宇宙×AI事業を推進してきた。
今回、生成AIと連携する解析ツールを開発し、政府や自治体、民間企業、さらには個人まで幅広い利用者が衛星データを扱いやすくなる環境を提供することを狙う。
新たに公開されたベータ版ツールは、米Anthropicの「Claude」をはじめとする生成AIとシームレスに接続可能だ。
ユーザーが自然言語で「特定地域の変化を衛星データから検知してください。さらにニュースを調査して変化の理由を根拠をもって説明してください」といった指示を入力すれば、解析とニュース調査を組み合わせた報告が自動的に生成される仕組みとなっている。
生成される内容は、AIの緯度経度推定能力に依存するため、緯度経度を明示すれば、より安定した動作が得られるとされる。
解析に利用されるのは、同社が開発・運用する「Sentinel-1時系列変化検知アルゴリズム」である。
合成開口レーダー(SAR)衛星「Sentinel-1」のデータを取得し、特定地点の変化を時系列で分析する。
変化の発生時点を特定し、その情報を生成AI経由で提示することが可能だ。
ツールは「Claude Pro」のコネクタ機能での動作を確認済みであり、同様のModel Context Protocol(MCP)(※)に対応する環境でも利用可能だ。
提供されるサービスは無料で、最長6カ月の解析期間をサポートする。
ただ現在では実証段階であるため、仕様変更や提供停止の可能性もあると明記されている。
※MCP(Model Context Protocol):生成AIに外部データやツールを接続するための標準仕様の一つ。
衛星データ活用の裾野拡大へ 新市場創出とリスクも並存
今回のツール公開は、衛星データの利活用を一部の専門機関から一般利用者へと拡張する契機となるだろう。
自然言語による操作は習熟コストを大幅に下げ、災害監視や都市計画、農業モニタリングといった応用範囲を一気に広げると期待される。
現地調査の補助やメディア報道の裏付けといった活用にもつながり、意思決定の迅速化が見込まれる。
一方で、ベータ版であるため、精度や安定性に限界があると考えられる。緯度経度指定を誤ると、結果が不正確になるリスクがある。
さらに、解析対象に機密性の高い情報を含む場合は、入力データが外部サービスに渡ることでセキュリティリスクが生じる可能性も否定できない。
スペースシフトは今後、同社が保有する複数のアルゴリズムや深層学習モデルを順次拡張ツールとして提供するとしており、衛星データ解析の民主化に向けた基盤整備が進むと見られる。
市場が急拡大すると予想される一方で、精度保証や利用責任の所在をどう設計するかが、大きな焦点となるだろう。