ソフトバンクが事務手数料を1100円値上げ 物価高騰が背景、無料のネット手続きも有料化へ

2025年8月20日、ソフトバンクは携帯電話サービスにおける事務手数料を一律1100円引き上げた。
これまで無料だったオンライン手続きも有料化され、ワイモバイルやLINEMOを含むグループ全体で適用される。
NTTドコモも9月から追随する動きを見せている。
ソフトバンク、店頭・オンライン手続きすべて有料化に
ソフトバンクは20日から、物価高騰や運営コスト増加を背景に事務手数料の改定を実施した。
店頭での新規契約や機種変更などは現行の3850円から4950円に引き上げられ、グループ傘下のワイモバイルやLINEMOにも同様の改定が適用される。
また、これまで無料だったオンライン手続きも有料化される。
新規契約や機種変更では一律3850円の手数料が新設され、譲渡や電話番号変更、ブランド間の乗り換えといった幅広い手続きに対しても改定が行われる。
ただし、ウェブでのSIM再発行については「当面無料」とされ、準備が整い次第有料化を告知するとしている。
利用者の負担増を和らげるため、ソフトバンクはPayPayカード利用者向けのポイント還元制度を導入した。
条件を満たせば1100円相当のPayPayポイントが付与される仕組みであり、自社内乗り換えの場合には「実質0円」となる優遇も設けられた。
一方、NTTドコモも9月5日から店頭手数料を4950円に引き上げると発表しており、主要キャリアの事務コストが一斉に増加する流れが強まっている。
ただしドコモはオンライン手続きについては引き続き無料を維持するとしており、各社の戦略の違いも浮き彫りになっている。
ユーザー負担増で業界全体に波紋 利便性か収益確保か
今回の改定は、携帯大手が物価高騰や人件費増加に対応するための動きとみられる。
特にソフトバンクは、ウェブ経由の手続きにまで料金を設定したことで利便性の低下が危惧される。
従来、オンライン化はユーザー負担の軽減策として推進されてきただけに、重要な方向転換とも言える。
PayPayカード利用者への還元策により、自社の金融サービスとの連携を強化するのは、戦略的な一手だと評価できる。
グループ内のエコシステムを活用することで、ユーザー囲い込みや付加価値の創出につなげる狙いが見える。
また、店頭窓口の人員配置や運営コストを抑制する効果も期待できる。
一方で、消費者にとっては契約や機種変更の費用負担が増すだけでなく、オンライン手続きの魅力が大きく損なわれる可能性がある。
特にデジタル世代や格安志向の利用者層が他社やMVNOに流出するリスクは無視できない。
業界全体としては、ソフトバンクの方針が標準化するかどうかが注目される。
ドコモはオンライン手続きの無料維持を打ち出しており、ここが差別化要因となれば競争の軸が「料金」から「利便性」へ移行する可能性もある。
いずれにせよ、通信各社が収益確保と利用者満足度のバランスをどのように取るかが、今後の市場動向を左右すると言える。