ロイター・イプソス世論調査 米国民の7割がAI進歩で恒久的失業を懸念

2025年8月19日、ロイター/イプソスが実施した最新の世論調査で、米国民の約7割が人工知能(AI)の進歩によって恒久的な失業が広がる可能性を懸念していることをロイターが報じた。
調査は全国の成人を対象に行われ、雇用や社会秩序への影響に対する深い不安が浮き彫りになった。
AI進歩が雇用や社会に与える影響に米国民の不安高まる
ロイター/イプソスが2025年8月18日までの6日間で実施した調査には、全米の成人4,446人が回答した。
その結果、71%が「AIによりあまりにも多くの人が恒久的に失業する」との懸念を示した。
現状では米失業率は7月時点で4.2%にとどまり、直ちに大量の失業が発生しているわけではない。
しかし、雇用や産業構造がAIによって急速に変わる可能性がある中、将来への不安が強まっている。
調査はまた、AIの社会的不安要因についても浮き彫りにした。
回答者の77%が「AIは政治的混乱を助長する恐れがある」と答え、偽動画や虚偽情報の拡散リスクに警鐘を鳴らした。
AIが民主主義や選挙に悪影響を与えるのではないかとの見方が根強い。
さらに、AIの軍事利用についても慎重な姿勢が目立った。
48%が「政府は軍事攻撃の標的選定にAIを利用すべきではない」と回答し、賛成は24%にとどまった。
技術の進歩を国家安全保障にどう取り入れるかは依然として議論が分かれる分野である。
エネルギー面の懸念も浮上した。
61%がAIの運用に必要な電力を問題視しており、環境負荷やエネルギー需給への影響を警戒する声が多い。
加えて、AIとの過度な関わりが人間関係を希薄化させると懸念する回答も全体の約3分の2に上った。
教育分野については評価が割れ、36%が役立つと答えた一方で、40%は否定的であった。
懸念と期待が交錯するAI時代 雇用政策と規制の行方に注目
今回の調査結果は、米国社会におけるAIへの感情が「利便性と効率」への期待と「失業や混乱」への不安の間で揺れ動いていることを示している。
特に雇用面では、自動化や生成AIの普及が進むことで、従来の労働市場に不可逆的な変化が生じる可能性が否定できない。
産業界においては効率性の向上やコスト削減というメリットがある一方で、労働者の再教育や新たな雇用創出をいかに進めるかが問われることになる。
また、政治的混乱や偽情報拡散への懸念は民主主義の基盤を揺るがしかねない。
規制当局や政府は、AI活用の範囲をどこまで認めるか、表現の自由と社会秩序の維持をどう両立させるかという難題に直面するだろう。
軍事利用やエネルギー問題についても国際的なルール作りが求められる局面に差しかかっている。
AIが教育や医療などの分野で発展すれば、社会全体の利便性が飛躍的に向上する可能性も残されている。
だがその実現には透明性の高いガバナンスと国民の理解が不可欠である。
今回の調査で示された国民の懸念は、AI時代における政策設計の前提条件として重視されるべきだと言える。