ワイオミング州、全米初の州発行ステーブルコイン「FRNT」をローンチ

2025年8月19日、米ワイオミング州のステーブル・トークン委員会は、全米で初めて州政府が発行するステーブルコイン「フロンティア・ステーブル・トークン(FRNT)」のメインネット稼働を発表した。
ドルと国債で裏付け、7チェーン対応のFRNT誕生
ワイオミング州はFRNTの設計において、米ドルと短期国債による完全担保を基盤に据えた。さらに州法で義務付けられた2%の過剰担保を確保し、価格の安定性を強固にしている。
この仕組みにより、民間発行のステーブルコイン(※)で懸念される信用不安を回避し、公的な信頼性を伴う点が大きな特徴だ。
インフラ面では、レイヤーゼロの技術協力により、アービトラム、アバランチ、ベース、イーサリアム、オプティミズム、ポリゴン、ソラナといった主要ブロックチェーンに対応する。
利用者は複数のネットワーク間で相互運用可能なステーブルコインとしてFRNTを活用でき、既存のDeFiや決済エコシステムに組み込みやすいとみられる。
マーク・ゴードン州知事は「ワイオミング州は2016年以来、ブロックチェーンと仮想通貨規制において45以上の法案を可決し、先導的な役割を果たしてきた」と強調。
今回のFRNT発行は、州政府自らがデジタル金融インフラを担う姿勢を鮮明に示した格好である。
さらに、FRNTはクラーケン取引所でのソラナ経由購入や、レインのビザ統合カードによるアバランチ経由利用の開始が予定されており、日常決済や投資の場での実用化が進む見通しだ。
運営基盤としては、ファイアブロックスがインフラを担当し、フランクリン・アドバイザーズが資産管理を担う。透明性と堅牢性を重視した運用が期待される。
※ステーブルコイン:米ドルや国債などの安全資産に価値を連動させ、価格変動を抑えた暗号資産。決済や国際送金での利用が拡大している。
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州政府コインの可能性と課題 金融実験の試金石に
FRNTの登場は、州レベルでのステーブルコイン発行という新たな枠組みを切り開いた点で意義深い。
連邦政府が7月にステーブルコイン規制法案を成立させた直後にローンチされたことからも、米国全体で法制度と実運用を接続する実験的な試みであると考えられる。
今後、他州が同様の仕組みを検討する可能性も高いだろう。
一方で、州発行コインには課題もある。
まず利用範囲がどこまで拡大するかは未知数であり、民間のステーブルコインや既存の決済インフラとの競合が生じる可能性がある。さらに、過剰担保や資産管理の透明性が維持されるかどうか、運営コストがどの程度になるかも注視すべき点だ。
本件のメリットとしては、州政府が発行主体となることで法的な裏付けと信頼を得やすく、地域経済の決済や納税プロセスに組み込まれる道が開かれることが挙げられる。特にブロックチェーン関連企業が多く集まるワイオミング州では、FRNTが州内外のビジネスを呼び込む誘因となる可能性がある。
ただし、全米規模での普及には連邦規制当局との調整や市場の受容性が不可欠である。
FRNTが先行事例として成功を収めるか否かは、信頼性の維持と実用性の両立にかかっていると言える。
ワイオミング州の取り組みは、デジタル通貨時代における「州政府モデル」の実現可能性を測る試金石となるだろう。