シンガポール首相、雇用を最優先に AIリスクと保護主義の高まりに備え

2025年8月17日、シンガポールのウォン首相は毎年恒例の政策演説で、世界的な保護主義の台頭や人工知能(AI)がもたらすリスクに対応するため、国民の雇用確保を政府の最優先課題とする方針を表明した。
ウォン首相、「われわれの究極の経済戦略は雇用」と主張
シンガポールのウォン首相が17日、総選挙後初となる政策演説を行った。
米中対立やトランプ米大統領による関税措置、新技術による雇用不安を背景に、シンガポール経済は転換点を迎えていると指摘し、最大の課題と位置づけた。
その上で「われわれの究極の経済戦略は雇用にほかならない。これが最優先課題だ」と述べ、国民の安定した職の確保を最優先課題に据える考えを強調した。
本演説は、今年5月の総選挙で与党・人民行動党(PAP)が圧勝した後、初となる本格的な演説であり、政策方針が示された。
具体的には、社会的セーフティーネットの拡充や住宅建設の推進などが示された。また、中小企業支援として、AIを活用した新たな職業マッチング制度や大学新卒者向け研修プログラムの創設が発表された。
また、ウォン首相政権下でPAPは社会保障政策を拡充し、同国初の失業給付制度を導入した。生活必需品、公共料金、教育関連の補助金拡大などに、今後も重点的に予算を投じる方針である。
演説ではさらに、外部環境の変化は一時的ではないとし、経済戦略の見直しが表明された。競争力維持やグリーンエネルギーの活用、国内企業の海外市場進出支援など、幅広い施策を検討する構えである。
成長率上方修正の裏で問われる持続的雇用対策
シンガポール経済の短期的な成長が維持される可能性は高いが、その持続性は外部環境に大きく依存すると思われる。米中対立や世界的保護主義の潮流は長期化する見通しであり、輸出依存度の高いシンガポールは引き続き外的ショックに晒される立場にあると言える。
そのため、雇用重視の政策は経済基盤を守るための「防御的戦略」として、今後重要性を増すと考えられる。
今後は、AI関連分野やグリーンエネルギー産業へのシフトが、雇用確保と競争力維持の双方を実現できるかどうかの鍵を握るだろう。政府が教育や技能研修に予算を投じ続けることが前提となるが、これが労働市場全体に浸透すれば、新しい職種の創出と労働者の移行が円滑に進む可能性がある。
逆に、その取り組みが不十分であれば、雇用の二極化と社会不安の増大を招く恐れがありそうだ。
総じて、ウォン政権の「雇用最優先」は政治的には強い支持を得やすいが、長期的には単なる雇用維持ではなく、新産業の育成と人材の再配置をいかに進められるかが成否を決定づけると考えられる。