日興証券、AIで顧客引き継ぎ効率化 20年分の会話記録を要約表示

SMBC日興証券が、営業員と顧客の最長20年分の会話記録をAIにより要約して、引き継ぎに活用する仕組みを導入したことが2025年8月15日、明らかになった。
国内4店舗で試験運用を開始しており、本年度中に全国展開を目指す。
営業員の異動でもAIが顧客履歴を瞬時に整理
SMBC日興証券は、顧客引き継ぎの効率化を目的にAIシステムを試験導入した。
営業員が転勤や人事異動で交代する際、過去のやりとりを数週間で整理することは従来困難だった。
営業員1人が数百人の顧客を担当するケースが一般的であり、顧客の関心事項や資産状況を短期間で把握することは大きな負担になっていた。
こうした課題を解決すべく日興証券は、AIによって20年分の会話記録を要約し、要点を表示する仕組みを実現した。
これにより、新任の営業員が顧客情報を迅速に理解し、適切な提案につなげることが可能となる。
2024年12月にさいたま市の大宮支店で運用を開始し、現在では名古屋など計4支店に広がっている。
日興証券は2025年度中に全105店舗への展開を計画している。
AIがもたらす営業効率化とリスク管理の課題
AI活用による引き継ぎ効率化は、顧客体験の向上と業務効率の両立を狙った施策である。
営業員は着任直後から顧客の過去のやりとりを把握できるため、関係構築に必要な時間を短縮できる。
これにより顧客離れを防ぎ、安定した取引継続につながると期待される。
一方で、過去20年分のデータを要約する過程では、文脈の取りこぼしやニュアンスの誤解といったリスクも残る。
顧客情報の扱いに関しては個人情報保護法の観点からも高度なセキュリティ対策が不可欠となるだろう。
証券業界全体で人材流動性が高まるなか、AIによる顧客データ活用は不可避の流れと考えられる。
今後は制度的なガイドラインと実務の最適化が進めば、金融業界の標準ツールとなる可能性がある。











