AIスタートアップTensor、自動運転レベル4「Robocar」発表 2026年納車予定

2025年8月13日、米AIスタートアップTensorは、個人所有を前提に設計した自動運転車「Tensor Robocar」を公開した。
自動運転レベル4に対応し、米国や欧州など一部市場で2026年後半から納車を予定している。
個人所有型の自動運転車「Robocar」登場
AIスタートアップTensorは8月13日、個人向け自動運転車「Tensor Robocar」を発表した。
従来のロボタクシー中心の設計とは異なり、大規模な消費者所有を前提にした初の量産型モデルとされる。
車両は100以上のセンサーを搭載し、カメラ37台、LiDAR5基、レーダー11基、マイク22基、超音波センサー10基を統合する構成だ。
外観は流線形で近未来的なデザインを採用しており、TeslaのModel YやWaymoのJaguar I Paceを想起させる。
自動運転レベル4(※)に対応し、特定条件下では完全自動走行が可能となる。
利用者は音声指示で車両を操作でき、スマートフォンからの呼び出しや降車後の駐車指示も可能だ。
また、必要に応じて運転席から自らハンドルを操作できる仕組みも備える。
展開は米国、欧州、アラブ首長国連邦の一部市場を対象とし、2026年後半に納車を開始予定である。
価格は未公表だが、同社は米国の連邦自動車安全基準(FMVSS)など各国の厳格な規制に適合させると説明した。
コンサルティング会社Avrio Instituteの社長であるShawn DuBravac氏は「2026年というTensorの納車目標は野心的だが、不可能ではない。広範な一般提供に先立ち、まずは特定地域で限定的に展開すると私はみている」と述べている。
※自動運転レベル4:国際的に定められた基準で、人間の操作を必要とせず、特定の条件下で完全自動走行が可能となる段階。
普及に向けては規制・コスト・信頼が課題
Tensor Robocarは、個人が所有できるレベル4自動運転車という新たな概念を提示するものだ。
しかしその普及には、複数の障壁が想定される。
第一に、各国の安全基準や交通法規に対応する規制上の課題がある。市場導入には承認や認証の取得が不可欠であり、各地域での展開速度を制約する可能性がある。
第二に、センサーやAIシステムにかかる高コストが消費者価格に直結する点だ。
高度な技術を搭載しながら、どの水準で価格を設定できるかが普及の成否を左右すると考えられる。
さらに、消費者の信頼獲得も重要な要素だ。
多数のカメラやマイクを備える車両に対し、プライバシーやセキュリティ面での懸念が払拭されなければ、市場での受容は進みにくい。
暗号化や物理スイッチなどの仕組みは一定の安心材料になるが、長期的には実際の利用実績と安全性の証明が求められるだろう。
競合他社がロボタクシー事業を拡大する中、個人所有型という差別化要素は市場を揺さぶる可能性を持つ。
ただし、規制、コスト、信頼性という三重の壁を乗り越えなければ、本格的な普及は難しいと言える。
Tensorの挑戦は、自動運転技術の未来像を占う試金石となるだろう。