コインベース、ステーブルコイン資金提供を再開 DeFi流動性拡大へ布石

2025年8月12日、米暗号資産取引所コインベースが「ステーブルコイン・ブートストラップ・ファンド」を再始動すると発表した。
USDCやEURCをDeFiプロトコルに投入し、市場流動性の底上げを図る狙いだ。
アーベやモルフォなど主要プロトコルへUSDC・EURC投入
コインベースは2019年に創設した「ステーブルコイン・ブートストラップ・ファンド」を復活させ、分散型金融(DeFi)領域での資金供給を再開した。
第一弾として、アーベ(Aave)、モルフォ(Morpho)、カミノ(Kamino)、ジュピター(Jupiter)といった確立済みおよび新興プロトコルに、米ドル連動型のUSDコイン(USDC)とユーロ連動型のEURコイン(EURC)を配分した。
このプログラムはコインベース・アセット・マネジメントが管理し、対象プロトコルの貸出市場や流動性プールに直接資本を注入する。
2019年当時は、ユニスワップ(Uniswap)、コンパウンド(Compound)、dYdXといった初期DeFiのインフラを支え、USDCを最も広く利用されるステーブルコイン(※)へ押し上げた実績がある。
今回の再開にあたり、コインベースはファンド規模や各プロトコルへの割当額を非公表としている。
ただし広報担当者は、複数ネットワークでの試験的展開を経て拡大する方針を明らかにした。背景には、DeFi市場全体の運用資産総額が約2000億ドル(約29兆円)と、4月から倍増する活況があるものの、2021年のピークをなお下回っている現状がある。
※ステーブルコイン:米ドルやユーロなど法定通貨に価値を連動させ、価格変動を抑える暗号資産。決済や資金移動、DeFi運用の基盤として利用される。
規制緩和と市場拡大が追い風 安定利回り競争が加速の公算
今回の資金提供再開は、米国内の規制環境がわずかに和らぎ、暗号資産市場が回復基調にあるタイミングで実施された。
安定した価値を持つステーブルコインは、価格変動リスクを抑えながら流動性供給や利回り獲得が可能であるため、機関投資家の参入を促す重要な要素となるだろう。
プロトコル側にとっても、大口の資本注入は貸付残高や取引高の拡大につながり、ユーザーへの利回り還元余地を広げられるという利点がある。これによりDeFi間の金利競争も一段と激化し、結果的に利用者が享受するリターンの向上も見込まれる。
一方で、短期間に大量の資本が流入すれば市場構造が偏り、資本の引き揚げ時に流動性不足が顕在化するリスクも残る。規模が拡大したDeFi市場は、サイバー攻撃やスマートコントラクトの脆弱性といった固有の課題を抱えるため、安定運営には慎重なリスク管理が欠かせない。
今後は、他の大手取引所やステーブルコイン発行体も類似の資金提供策を展開する可能性が高く、DeFi市場全体で流動性確保と利回り競争が一段と激化すると見られる。
規制環境の緩和や市場回復基調が続けば、機関投資家の参入は増え、プロトコル間の資本競争がグローバル規模で広がる可能性がある。
今回のコインベースの動きが、先陣を切る象徴的な一手となるか、引き続き注目したい。