AI依存で医師の腸内視鏡診断力低下 国際研究、腺腫発見率が20%減少

2025年8月13日、ポーランドを含む国際研究チームは、医師が普段からAIの助けを借りていると、AI非使用時の大腸内視鏡検査で腺腫発見率が約20%低下するとの研究結果を英医学誌ランセット関連誌に発表した。
AI常用で非使用時の腺腫発見率が顕著に低下
腺腫は大腸がんの前段階となるポリープの一種であり、内視鏡で発見・切除することでがん予防が可能とされる。
近年はAIが画像上の疑わしい部位をハイライトし、医師の判断を支援するシステムが急速に普及している。
今回の研究はポーランド国内4施設で実施され、19人の内視鏡医(経験年数8〜39年)が担当した。解析対象はAI導入前後6カ月間に受診した約2200人の検査データである。
AI導入前の3カ月間、受診者795人のうち腺腫が見つかった割合は28.4%だった。
導入後は受診者をAI使用群と非使用群に分けて検査を実施したところ、非使用群648人では発見率が22.4%と6ポイント減少した。
一方、AI使用群734人では発見率の有意な低下は見られなかった。
診断精度と技能維持の両立へ 医療現場に求められる新ルール
今回の結果は、AIが検査精度を高める一方で、医師が過度に依存すると注意力や観察力が低下するリスクがあることを示唆している。
一方で、AIを活用することで腺腫の見落としを減らせるという恩恵は大きく、特に経験の浅い医師や症例数の少ない地域病院においては安全性向上の効果が期待される。
そのため、問題は「どの程度依存を許容するか」というバランスの取り方にあると思われる。
今後は、AI支援の恩恵を受けつつ医師の判断力を維持するための運用ガイドライン策定が急務となるだろう。AI導入後のパフォーマンスを定期的に評価し、必要に応じて再訓練を義務化する仕組みが広がれば、技術と技能の両立が可能になると考えられる。
AIの進化は今後も続くと思われるが、その利便性が医療従事者の根本的な能力を損なうことがないよう、制度面・教育面での対策が今後の医療の質を左右すると言える。