NTT、複雑な企業戦略をAIで自動立案 マルチAIエージェント基盤技術を開発

2025年8月8日、NTTは複数のAIエージェントが協調して複雑なプランニング業務を遂行できる「AIエージェント自律協調基盤技術」を開発したと発表した。
人間の記憶構造を模した仕組みを採用し、マーケティングや企業戦略立案への活用を想定している。
人間の記憶構造を応用しAI間協調を実現
NTTは8月8日、複数のAIエージェントが連携して複雑なタスクをこなすための基盤技術を開発したと発表した。
従来のマルチAIエージェントシステムは、タスクを分割してサブタスクごとに特化したAIが処理する構成が主流だったが、結果を単純に連結するだけで統合的な解決策を生成できないという課題があった。
新技術では、人間の記憶構造を参考に「エピソード記憶」と「意味記憶」の2種類が各エージェントに実装された。
エピソード記憶は個別経験を、意味記憶は一般化された事実を蓄積し、エージェント同士が会議のように知識を動的に共有しながら方針を調整する。
さらに、必要に応じて「専門家エージェント」を生成し、特定領域の知見を持ち寄ることも可能だ。
NTTは紅茶ビジネスプランの検討シナリオで従来手法と比較した。
その結果、新技術では顧客ニーズに応じた多角的な製品開発やワークショップ企画を統合的に提案できたと説明している。
自動評価と人手評価で従来比14.4%の性能向上、知識再利用時は17.2%の向上が確認された。
NTTは、2025年度中に本技術の概念実証を進める予定である。
高度な企画業務の自動化がもたらす可能性と課題
今回の基盤技術は、企業ブランディング戦略や多角的な事業計画など、複数部署の調整が必要な業務をAIが継続的に実行できる点で大きな意義がある。
特にマーケティング、広報、商品企画など多分野の知見を統合する場面で、人的リソースの削減や意思決定の迅速化が期待できる。
一方で、AIが生成する企画の品質や適合性を人間がどう検証し、最終判断に反映させるかは課題となりそうだ。
知識共有や協調が可能になっても、前提条件の誤りや倫理的配慮の欠如があれば、成果物の信頼性に影響する可能性があるからだ。
今後は、業界や企業ごとの特性を反映したモデルの調整や、AI同士の協調プロセスを可視化する仕組みが必要になるだろう。
また、知的財産や機密情報を扱う場合には、データ管理や権利保護の観点から安全性の確保も欠かせない。
こうした条件を整えられれば、本技術は戦略立案や創造的業務の新たな標準ツールとなる可能性を秘めている。