米グーグル、大学100校超にAI研修支援 3年間で10億ドル規模の資金・ツール提供

2025年8月6日、米グーグルは全米の大学や非営利団体に対し、人工知能(AI)研修や関連ツールを3年間で総額10億ドル相当提供すると発表した。
テキサスA&M大やノースカロライナ大など米有数の公立大学も参加する。
生成AIも無償提供、全米規模で学生研修を後押し
グーグルは今回の支援プログラムで、全米100校以上の大学に資金、クラウドコンピューティングの利用権、生成AIモデル「Gemini」の高度版を含む各種ツールを提供する。学生はこれらを活用してAIスキルを習得できるほか、研究課題への応用も可能になる。
特に、クラウド利用のクレジットは大規模データ分析やモデル学習に不可欠であり、教育現場における実践的なAI研究の裾野を広げる効果が期待される。
ジェームズ・マニカ上席副社長は、米国内の全認定非営利大学への拡大を視野に入れるとともに、国外での同様プログラム導入を検討していると述べた。
支援総額10億ドルのうち、現金や外部支出と自社サービス(クラウドやサブスクリプション)への費用配分については明らかにしていない。
競合の米マイクロソフトも7月に世界の教育分野へ40億ドルを投入すると発表しており、AI教育分野での覇権争いが加速している。
AI教育拡大がもたらす人材競争と格差リスク
生成AI技術の急速な進化は、産業界に大きな影響を与えている。
この技術を最大限に活用するためには、AIエンジニアやデータサイエンティストといった専門人材の育成が不可欠だ。高等教育段階からの体系的な研修は、AI人材の供給力を高め、企業の競争力強化に直結すると言えるだろう。
今回のグーグルによる全米規模のAI研修支援は、高度な生成AIや大規模クラウド環境を学生が実際に利用できることで、理論だけでなく実践的スキルを早期に習得できる点は大きい。
特に、膨大な計算資源を必要とする研究やモデル開発が容易になれば、スタートアップや中小規模の研究チームでも競争力を確保しやすくなる。
また、こうした経験を積んだ学生は産業界で即戦力となり、企業側も採用コストを削減できる可能性がある。
一方で、支援を受けられる大学とそうでない大学との間で教育環境の格差が拡大する懸念もある。高額な計算資源や高度AIへのアクセスは、AI研究の質と速度を左右するため、対象外の教育機関が不利になる可能性は否定できない。
また、米国以外の国への展開は計画段階にとどまっており、グローバルなAI教育格差の是正には時間を要するだろう。
AI教育分野での投資競争は、マイクロソフトなど競合大手の動きも相まって、今後さらに激化するとみられる。
大学間や国際間の格差を是正するためには、単なる企業主導ではなく、政府や公的機関が補完的役割を果たす必要があるだろう。