トランプ米大統領、仮想通貨支持派のミラン氏をFRB理事に指名 デジタル金融政策強化か

現地時間2025年8月8日、ドナルド・トランプ米大統領は仮想通貨に友好的な経済学者スティーブン・ミラン氏を連邦準備制度理事会(FRB)の理事に指名すると発表した。
米金融政策の中枢に、デジタル資産規制合理化を掲げる人物が加わることになる。
仮想通貨規制合理化を唱える経済学者がFRBへ
トランプ大統領は8日、空席となっているFRB理事ポストに、現政権の経済諮問委員会委員長であるスティーブン・ミラン氏を指名すると公表した。
ミラン氏は2026年1月31日まで理事ポストに就任し、その後は恒久的な後任を探すことになる。
FRB理事会は議長・副議長を含む7名で構成され、米国の金融政策の最高意思決定機関として機能している。
ミラン氏はハーバード大学で経済学博士号を取得し、第1期トランプ政権下でも同職を経験。
トランプ氏は「経済学の世界での専門知識は比類ない」と高く評価している。
経歴面では、ミラン氏はハドソンベイ・キャピタルでFTX破産債権の取引戦略を担当した元シニアストラテジストであり、財務省やフィデリティ・インベストメンツでも勤務した実績を持つ。仮想通貨規制の合理化を一貫して主張しており、現行の規制網を批判してきた。
また、ジェローム・パウエルFRB議長に対しても金融引き締め政策を巡る批判を行っており、トランプ大統領の利下げ圧力と歩調を合わせる姿勢を示している。
ただし、スコット・ベセント財務長官は、トランプ氏がパウエル議長の解任ではなく、来年5月の任期満了までの続投を容認する意向であると説明している。
仮想通貨業界に追い風も、FRBの政策独立性に懸念
ミラン氏の就任は、仮想通貨市場にとって規制緩和への期待を高める可能性がある。特に、取引所やカストディ(※)事業者に対する監督基準の簡素化、銀行によるデジタル資産保有の容認などに期待がかかる。
規制の明確化は業界の制度的信用を高め、機関投資家の参入を促す契機となるだろう。
一方で、FRBは法的には政治から独立して金融政策を決定する機関であるため、大統領の経済方針に近い人物の登用は、その独立性を損なう懸念もある。
特に、利下げや量的緩和といった金融緩和策が大統領選挙や景気刺激策と連動して実施されれば、市場の信認に影響を及ぼすこともあり得る。
ミラン氏の仮想通貨寄りの姿勢は業界にとって追い風になると思われるが、政策判断が市場の短期的期待に傾き過ぎれば、インフレ抑制や金融安定の観点でリスクになりかねない。
仮想通貨を巡る規制緩和の行方と、FRBの政策スタンスの変化がどのように絡み合うかは、金融市場と政治双方に波紋を広げることになると考えられる。
※カストディ:金融資産の保管・管理サービス。仮想通貨の場合はウォレット管理や秘密鍵の保護を含む。