日立システムズ、AIで水道管の漏水リスクを解析 老朽化以外の要因も可視化

2025年8月6日、日立システムズは兵庫県内の水道事業体と連携し、AIを活用した水道管の劣化状態分析を実施したと発表した。
老朽化年数に限らず、複合的な漏水リスク要因の特定に成功したという。
AIが水道管の漏水リスク要因を多面的に分析
日立システムズは2025年8月6日、兵庫県内の水道事業体と共同で、AIを活用した水道管の劣化状態分析を行ったと発表した。
使用されたのは、同社が提供する「CYDEEN 劣化要因分析支援サービス(※)」で、水道管の敷設年度、管種、管路延長、水圧、地盤などの多様なデータをもとに漏水リスクを評価する取り組みである。
この分析により、水道管の劣化は経年だけでなく、複数の要因が重なることで進行することが判明した。
また、漏水の可能性が高い水道管を抽出することに成功し、優先的な更新対象として提示できるようになった。
敷設から30年未満の比較的新しい水道管でもリスクが存在する一方で、耐用年数を超えていても問題が見られない事例も確認されたという。
AIによる解析手法は、日立製作所の統計分析技術をベースに開発され、東京大学大学院情報学環の社会連携講座において有効性が評価されている。
これにより、異常事例が少ない状況でも、相関性のあるデータから損傷や影響の予測が可能となる。
今後、日立システムズは水圧や流量などのデータを加えた劣化診断の高度化や、下水道管への適用を見据えた研究開発を進めるとしている。
※CYDEEN 劣化要因分析支援サービス:日立システムズが提供する設備管理支援ツール。各種インフラデータをもとに、AIで劣化要因や故障リスクを分析し、優先的な点検・更新を支援する。
AIで進むインフラ点検の最適化 効率と持続性の両立に期待
今回の取り組みは、全国的なインフラ老朽化に直面する自治体にとって、更新計画の精度向上とリソース最適化の観点で大きな意義を持つ。
AIによって管種や設置環境、水圧といった複数の要因を同時に分析することで、これまで一律の年数基準でしか判断できなかった更新計画に柔軟性が生まれると考えられる。
特に、限られた予算と人員の中で、最もリスクの高い箇所に集中的に対策を講じられることは、長期的なインフラ維持にとって極めて有効だろう。
従来の人的判断に依存していた計画策定が、データ駆動型に移行することで、説明責任や優先度設定の透明性も高まると思われる。
一方で、AIの活用には各水道事業体のデータ整備状況や、運用ノウハウの差が影響する。
そのため、精度の高い分析を実現するには、データの標準化や運用体制の強化が不可欠であろう。
導入後の持続的な改善や、職員のデジタルスキルの底上げも今後の課題となりそうだ。
水道インフラは生活基盤を支える重要な公共資産であり、その更新は費用・期間ともに大きな負担を伴う。
AIによる分析手法が現場に定着すれば、持続可能な水道サービスの実現に向けた大きな一歩となるだろう。