サトシ・ナカモト像が湖から発見 修復に日本の伝統技法「金継ぎ」案も浮上

2025年8月3日、スイス・ルガーノ市で行方不明となっていた「サトシ・ナカモト像」が、近隣の湖で回収されたことが判明した。
修復手段として日本の伝統技法「金継ぎ」の適用も検討されている。
サトシ像、湖で発見 アーティストは「金継ぎ」での修復も視野に
2025年8月3日に行方不明と報じられた「サトシ・ナカモト像」が、ルガーノ市内の湖で発見された。
像は、ビットコインの象徴的存在である“サトシ・ナカモト”に着想を得て、イタリア人アーティストのヴァレンティーナ・ピコッツィ氏が制作した作品である。
2024年10月、同市で開催されたビットコインフォーラムで公開され、ビットコインのグローバル・ハブを目指す同市の象徴として設置されていた。
像の消失は、ピコッツィ氏が主宰する「Satoshigallery」がX(旧Twitter)で報告し、即座にコミュニティの注目を集めた。
台座だけが残された現場の写真とともに、像の行方に関する情報提供者には0.1BTC(※)の報奨金を提供すると発表していた。
一連の騒動は、ちょうどスイス建国記念日の祝賀期間中に起きた。
Xユーザー@Grittoshi氏は、監視カメラが多数設置された市内での運搬は困難だとし、「像は湖に投げ込まれた可能性が高い」と指摘していた。
その後、像は実際に湖から回収され、Satoshigalleryがその様子をSNS上で報告した。
破損の詳細は明らかにされていないが、ピコッツィ氏は日本の伝統技法である「金継ぎ」による修復が適切かもしれないと言及した。
ピコッツィ氏は像の修復費用を自己負担する意向を示しており、ルガーノ市には物流とセキュリティの支援を求める請願書も提出された。
金継ぎの美学が象徴性を強化 公共アートの保護体制にも課題
今回のサトシ像の修復にあたって浮上した「金継ぎ」という選択肢は、単なる修復手段にとどまらない象徴的意義を持つ。
もしこの技法が採用されれば、ビットコイン文化と東洋の美意識との異文化的融合が表現されることになり、サトシ像は単なるモニュメントを超えたアート作品として、むしろ深みを増すかもしれない。
一方で、伝統技術の正確な適用には高度な専門性が求められるため、費用や現地での対応体制には課題が残ると考えられる。
また、今回の一件は公共空間におけるアート保護の脆弱さが露呈した一件だと言える。
特に、仮想通貨という国際的テーマを掲げるモニュメントが被害を受けたことで、今後の都市政策やイベント運営において、セキュリティと保全対策の見直しが迫られる可能性が高い。ピコッツィ氏による修復費用の自己負担は芸術家としての責任感の現れともいえるが、公的支援の枠組みが不明確である点も今後の課題だろう。
仮想通貨文化の広がりに比例し、このような象徴的アートへの関心と議論は今後さらに高まっていくと考えられる。