福岡市、AI詐欺検知アプリ「詐欺バスター」 無料提供 特殊詐欺急増に対応

2025年8月5日、福岡市はAIを活用したアプリ「詐欺バスター」での詐欺被害防止の取り組みを開始した。
市民の特殊詐欺被害が過去最悪ペースで進行する中、民間企業と連携し、スマートフォンで詐欺リスクを即時検出する取り組みを進める。
AIで詐欺を即時検知、電話やメッセージの不審情報を遮断
福岡市が新たに導入したスマートフォンアプリ「詐欺バスター」は、AIが通話やメッセージの内容を解析し、詐欺の可能性を即座に通知するシステムである。
具体的には、詐欺電話の自動ブロックや、サイトやメッセージの詐欺の可能性をAIでチェックすることができる
このアプリの提供は、民間事業者からの提案により実現した。
福岡市内に在住・在勤するすべての市民を対象に、6カ月間無料で利用することができる。本アプリで収集された使用データは、今後の詐欺防止対策に活用される見込みだ。
昨年度、福岡市内で認知された特殊詐欺の被害件数は282件、被害総額は約9.6億円に達した。2025年度はすでにこれを上回るペースで推移しており、自治体単位での対策が急務となっている。
高齢者に届くかが鍵 デジタル格差と実効性に課題も
AIによる詐欺防止アプリは、急増する被害への対抗策として期待される一方で、その有効性はユーザー層のデジタルリテラシーに左右されると思われる。
特殊詐欺の被害者の多くは高齢者であり、スマートフォンの操作に不慣れな人々も多い。アプリが存在しても、活用されなければ防止効果は限定的となるだろう。
このため福岡市は、高齢者向けの講習会を順次実施する方針だ。
ただし、高齢者の中にはアプリの利用自体に抵抗感を持つ層も一定数存在すると考えられるため、教育・啓発をセットで進める必要があるだろう。
また、アプリによる詐欺検知には技術的な限界も存在すると思われる。
たとえば、AIが誤って無害な通話やメッセージを詐欺と判定する「誤検知」のリスクや、進化する詐欺手口に対応が遅れる懸念もある。
こうした限界を見落とし、AIに過度な信頼を寄せれば、かえって注意を怠る「安心しすぎるリスク」すら生まれかねない。
これらの課題を克服するには、AI技術の継続的な精度向上と、市民一人一人のデジタルリテラシーの啓発が不可欠であろう。
今回の取り組みは、自治体主導のAI活用という観点で他地域への波及効果も期待される。
今後、福岡市の導入事例が有効性を示せば、他の地方自治体でも類似のアプリ提供が進み、詐欺被害の全国的な抑制につながる可能性がある。
自治体が単なる“行政機関”にとどまらず、デジタル防犯の担い手として進化するか否かが問われる時代に突入していると言えそうだ。
関連サイト
福岡市 スマホアプリを活用した詐欺被害防止
https://www.city.fukuoka.lg.jp/shimin/seikatsuanzen/business/stopsagihigai.html