ANAが国際線全クラスで高速Wi-Fi無料化 YouTubeやNetflix視聴も可能に

2025年8月5日、全日本空輸(ANA)は国際線全クラスで高速機内Wi-Fiの無料提供を開始したと発表した。B767-300ER型機から導入を開始し、動画配信サービスの視聴にも対応する。
ANA、B767機から全クラス無料高速Wi-Fiサービスを開始
ANAは国際線のB767-300ER(202席仕様・JA625A)を皮切りに、高速機内Wi-Fiの無料提供を開始した。
今回ANAにシステムを提供するViasat社は、北米の主要航空会社に広く採用されており、60社以上、4000機超の航空機に高速Wi-Fiを提供している。
信頼性の高いシステムをANAが導入したことにより、従来の機内インターネット環境の課題であった速度や安定性の問題が大きく改善された。YouTubeやNetflixといった動画ストリーミングも遅延なく視聴可能となったという。
利用開始は基本的に搭乗時から降機まで可能だが、就航先の規制により、離陸後約5分経過後から着陸5分前までの利用制限が残る場合もある。
対象機材には機内に専用プラカードが掲示され、Amazon Prime、Hulu、Netflixなどの有料動画配信サービスについては、各自のアカウント契約が前提となる。
ANAは2025年度末までに同型機3機の改修を終え、2026年度中にはB767-300ER全6機に高速Wi-Fiを拡大予定だ。
さらにB777-9やB787-9といった長距離仕様機にも順次導入し、2030年末までに国際線機材の8割以上で全クラス無料の高速インターネット環境を整備する計画を掲げている。
航空業界の競争環境に変化 機内体験が差別化の鍵に
ANAによる高速機内Wi-Fiの全クラス無料化は、航空業界全体におけるサービス競争の流れを一段と加速させる可能性がある。特に、長時間のフライトにおいて動画配信が途切れなく楽しめるという体験は、利用者満足度に直結しやすいと考えられる。
近年、国際線では価格競争だけでなく、機内での快適さや接続性の高さが選ばれる基準になりつつある。従来はビジネスクラスの乗客に限定されていた高速Wi-Fi環境をエコノミークラスまで拡大する動きは、企業のブランド価値向上にもつながるだろう。
一方で、提供対象が拡大することで通信容量の逼迫や安定性への懸念も残る。
動画視聴の利用が集中した場合の帯域制御や、地上インフラとの連携体制など、技術面での持続的な改善が求められる局面も出てくると予想できる。将来的には、Wi-Fiを通じた機内ショッピングやリアルタイム情報提供など、新たな収益源の開拓にもつながる可能性がある。
ANAにとって今回の施策は、単なるサービス拡充を超えた、次世代航空体験への布石となるかもしれない。