トランプ氏長男ら支援SPACが上場申請 3億ドル調達へ、製造・技術に照準

2025年8月4日、トランプ米大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏と次男エリック・トランプ氏が支援するSPAC(特別買収目的会社)が、米ニューヨーク証券取引所への上場を目指しIPOを申請した。
調達額は最大3億ドルにのぼる見通しである。
トランプ兄弟が支援、3億ドル規模のSPACが上場へ
トランプ兄弟によるSPACは、事業実態を持たず、上場で得た資金を使って他社を買収・合併することを目的としたいわゆる「ブランクチェック企業」として設立されている。
1株あたり10ドルで3,000万株を売り出し、最大3億ドルの資金調達を目指す。
申請書類によれば、同社は評価額が7億ドルを超える企業の買収を視野に入れており、重点分野として「国内製造業の活性化」「技術革新のエコシステム拡大」「重要なサプライチェーンの強化」などを掲げている。
CEOにはメディア業界で経験を積んだケビン・マクガーン氏が就任予定で、トランプ兄弟は同社の諮問委員として500万株の報酬を受け取る見込みだ。
トランプ一族は1月に手がけた公式ミームコイン「$トランプ」を発売し、仮想通貨関連企業WLFへの投資をするなど、ベンチャー事業を推進している。
主幹事はドミナリ・セキュリティーズで、同社CEOのカイル・ウール氏もニュー・アメリカの取締役に就任する。
これに対し、ランニング・ポイント・キャピタルのCIO、マイケル・シュルマン氏は「トランプ兄弟が受け取る500万株の株式に加え、主幹事会社のドミナリ・セキュリティーズのカイル・ウール氏が助言役になっていることを巡って企業統治体制が厳しく監視される可能性がある」と指摘している。
政治色濃いSPACに監視の目 投資家の評価は分かれる可能性
ニュー・アメリカが目指すのは、製造業とテック産業を結ぶ戦略的投資だが、トランプ一族による支援という色合いが、今後の企業統治や市場評価に影響を与える可能性がある。
トランプ兄弟は親会社ドミナリ・ホールディングスの主要株主でもあるため、今後は企業統治の透明性が注視されるかもしれない。
一方で、暗号資産・ホテル・ゴルフ・通信などへの投資を加速させてきたトランプ一族のネットワークを活用することで、買収先の企業価値向上につながる期待もある。
今後は、同SPACが掲げる「米国の戦略的インフラ再構築」というビジョンに、どこまで実態が伴うかが試されるだろう。
政治的背景を持つSPACに対しては、評価は二極化する可能性が高いと思われる。