東芝、人事戦略をAIと「歴史上の英傑」で議論 人的資本経営を支援

2025年8月4日、東芝デジタルソリューションズ株式会社(本社:神奈川県川崎市)は、AIエージェントを活用した人財戦略支援サービスの提供を開始した。
織田信長や豊臣秀吉などをモデルにしたAIと人財戦略を議論できる新サービスで、人的資本経営の実現を後押しする。
“信長”と議論し自社の未来を描く、新しい人財戦略支援ツール
東芝デジタルソリューションズが発表した本サービスは、AIエージェント(※)を活用することで、経営戦略に基づいた人財ポートフォリオの可視化から、育成プログラムの設計、施策の評価・改善までを一貫して支援する。
特長的なのは、歴史上の人物や人事の専門家をモデルとしたAIエージェントと議論ができる点だ。織田信長、豊臣秀吉といった英傑や、共感力重視の有識者などが仮想の対話相手として登場する。
※AIエージェント:
目的達成のために自律的に判断・行動し、対話や複数の業務をこなす人工知能のこと。企業支援や業務効率化に活用が進む。
人事部門の制約を超える AIが担う経営と人財の“橋渡し役”
東芝が提示する「AI×人的資本経営」の方向性は、今後の人事領域における大きな潮流の一つになると見られる。
人的資本の開示義務化が進行する中では、「人的資本をどう戦略に結びつけるか」は、多くの企業にとって未解決の課題である。
その解決手段として、AIによる対話型戦略支援は有効性を持つと考えられる。AIが経営資料や社内文書を自動で読み取り、意思決定に必要な論点を抽出する機能が高度化されれば、「人事部門の思考補助ツール」としてのポジションを確立していく可能性は高いだろう。
加えて、同社の「Generalist®」のような既存人財管理システムとの連携が進めば、データの一元管理とリアルタイム分析が可能になり、経営判断の即応性も格段に高まると推測できる。
一方で、AIの役割が拡大するほど、「人間はどの部分で意思決定すべきか」という論点はより重要になるはずだ。人事は本来、数値だけでは割り切れない感情や信頼関係も伴う領域であるため、AIの支援によって「人が人を見る」時間を捻出する方向での活用が理想的である。
今後は、AIエージェントの信頼性確保や透明性の担保、社内教育の強化が普及のカギを握ると考えられる。活用が一部の先進企業に留まらず、ミドル層・地方企業にも波及していくかが、実効性ある人的資本経営の浸透を左右するだろう。