GuessがAIモデルを広告に起用 米ヴォーグ誌掲載で、消費者に懸念の声も

2025年7月31日、米CNNは、アパレルブランドGuessが米国版ヴォーグ8月号にAI生成モデルを起用した広告を掲載し、オンライン上で一部消費者の間に論争が広がっていると報じた。
ヴォーグ誌に掲載のGuess広告 AIモデル使用に違和感の声
アパレルブランドGuessが米『ヴォーグ(Vogue)』2025年8月号に掲載した広告で、AI生成モデル「ヴィヴィアン」を起用したことが議論を呼んでいる。
この広告は、AIマーケティング企業「セラフィン・バロラ」が制作したものだ。
金髪の白人女性がGuessのワンピースとバッグを身につけてポーズを取っており、画像の一部にはAI生成であることを示す文言が含まれていた。
「ヴィヴィアン」は、Guessの共同創業者ポール・マルチアーノ氏が複数の生成案から選定した。
実際には、実在モデルがGuessの衣装を着て撮影を行い、そのデータをもとにAI画像が作られたとされる。
広告の掲載を受け、一部の消費者からは「実在しないAIモデルがファッション誌に登場すること自体が不適切」、「これからは実在もしない人と比較されなくてはならないのか」といった批判の声が噴出している。
ヴォーグ誌はCNNに対して、「AIモデルが本誌の編集記事に登場したことはない」と述べ、広告枠として掲載されたものであると説明した。
制作企業の共同創業者アンドレア・ペトレスク氏は、「我々は今も実在のモデルを雇っている」とし「AI画像は実在するモデルのポーズや衣装のフィット感を基に生成されている」と説明した。
なお、AIファッション企業Lalaland.aiの創業者マイケル・ムサンドゥ氏は、「ファッション業界におけるAIモデルの活用は、我々が思っている以上にすでに広く浸透しており、法的に公開義務がないため、多くのブランドがそれを明かしていない」とコメントしている。
AIモデル普及がもたらす雇用と美的基準の揺らぎ
AIモデルの活用は、制作の効率化やコスト削減といった利点を提供する一方で、既存のファッションエコシステムに対して複雑な影響を及ぼす可能性がある。
第一に、モデルやカメラマン、メイクアップアーティストといった専門職の需要が減少するリスクがある。
AI生成画像が主流になれば、人手による撮影プロセスが縮小され、現場で働く人々の職域が狭まる可能性は否定できない。
第二に、AIが生成するビジュアルが特定の美的基準に偏る傾向も懸念されている。
特に白人中心のプロポーションや顔立ちが多く再現されることで、ファッション業界が進めてきた「美の多様性」や「包摂性」の理念が後退しかねない。
現状では、AIモデルの使用に関するルールやラベル表示の義務は存在せず、一般消費者にとって可視化されていないケースも多い。
この不透明性が、今回のような突発的な反発や混乱を生む温床となっていると考えられる。
今後、ファッション業界には、AI技術の導入と倫理的配慮を両立させるための透明なルールづくりが必要となるだろう。