テスラ、中国依存脱却へ布石 韓国LG系とLFP電池約6500億円契約

2025年7月30日、韓国のLGエネルギーソリューションは、米テスラと約43億ドル(約6500億円)規模のリン酸鉄リチウム(LFP)電池供給契約を締結したと発表した。
ロイター通信によれば、供給は米ミシガン州工場で行われ、エネルギー貯蔵用途に活用される見通しだ。
テスラ、LG系とLFP電池で43億ドルの契約締結
韓国のLGエネルギーソリューション(LGES)は7月30日、米テスラとの間で総額43億ドル(約6500億円)規模のLFP電池(※)供給契約を結んだと発表した。
契約内容によれば、供給される電池はLGESの米ホランド工場で製造され、テスラのエネルギー貯蔵システム(ESS)に使用される予定である。
テスラはこれまでLFP電池の大半を中国の大手電池メーカー・寧徳時代新能源科技(CATL)から調達してきた。
CATLはLFP電池市場で世界最大のシェアを持ち、同社製電池は主に電気自動車やESSに使用されている。
今回の契約により、テスラがLFP電池の調達先としてCATL以外を選んだのは初の事例となる。
テスラの最高財務責任者(CFO)であるバイブハブ・タネジャ氏は、2025年4月の決算発表時に、中国からのLFP電池調達が米国の関税の影響を受けていると指摘していた。
その上で、「中国以外からの調達を増やそうと努めているが、時間がかかりそうだ」と述べていた。
LGESは米国内でLFP電池の量産体制を整備している数少ない企業で、同社はこれまで、電気自動車用電池の需要が伸び悩む中、エネルギー貯蔵市場への注力を強めてきた。
※LFP電池:リン酸鉄リチウム(Lithium Iron Phosphate)を正極材に用いたリチウムイオン電池の一種。高い安全性と長寿命、低コストが特長で、EVやエネルギー貯蔵用途での利用が進む。
電池調達の多様化進む テスラのサプライ戦略に転機
今回のLGESとの契約は、テスラにとって調達先の多様化を進める象徴的な動きといえる。
特に、エネルギー貯蔵システム(ESS)分野において、これまで依存していた中国・CATLから米国内生産のLGES製品への切り替えを図ることで、地政学的リスクや関税負担の軽減が期待される。
メリットとしては、米国内生産の電池調達によって関税回避と供給安定性の両立が可能になる点が挙げられる。
また、サプライチェーンを中国以外に分散させることで、リスクマネジメントの強化にもつながるだろう。
一方で、LFP電池技術においては中国メーカーが依然として優位を保っているため、LGESがCATLと同等の品質・供給能力を短期間で確立できるかは課題となる。
量産立ち上げや品質保証には時間とコストがかかるため、調達の完全な切り替えには慎重な対応が必要そうだ。
また、テスラは同時期に韓国サムスン電子ともAI半導体に関する大規模契約を結んでおり、韓国企業との戦略的連携を強化する傾向がみられる。
これは、テスラがエネルギーとAI双方の分野で中国依存を緩和し、米国中心の製造体制を再構築しようとする流れの一環と捉えられる。