中国Manus、AIエージェントの同時稼働で調査効率化 新機能「Wide Research」発表

2025年7月31日、中国発のAIスタートアップManus(マヌス)が、複数のAIエージェントによる同時リサーチ機能「Wide Research(ワイド・リサーチ)」を発表した。業務効率化を狙い、有料プランから段階的に提供される。
複数のAIが同時に調査 Manusの新機能が業務効率を革新
中国・北京を拠点とするAIスタートアップManusは、リサーチ業務のスピードと効率を大幅に向上させる新機能「Wide Research」をリリースした。発表は同社の公式ブログおよびX(旧Twitter)上で行われ、2025年3月のサービス開始以来、最大規模の機能アップデートとなる。
Wide Researchは、複数のAIエージェントを同時並行で動作させ、大量の情報を瞬時に処理・分析する機能。これにより、従来の単一エージェント型では時間のかかった比較調査や分類タスクが、飛躍的に効率化されると期待できる。
機能はProプランの利用者に即時提供され、今後は無料ユーザーにも段階的に拡大される予定だ。
具体的には、MBAプログラムの世界的なランキング作成や、大量の製品スペック比較といった、複雑で多変量な調査業務にも対応可能であるとされる。
共同創業者のピーク・ジー氏が公開したデモ動画では、100種のスニーカーの同時調査、さらには50種類のポスターデザインの作成・比較といった様子が紹介された。
ただし、ジー氏は本機能を「実験的」と位置づけ、一定の制約があることも認めている。
生成AI活用の次なる潮流へ 大量処理と分散思考の両立が鍵
Wide Researchが提示した「複数のAIが同時に思考・行動する」という概念は、生成AIの次のステージに向けた転換点を示している。今後は、AIによる作業が単なる代替から知的プロジェクトの分担協調型モデルへと進化していく可能性がある。
まず予想されるのは、より精緻なエージェント間の連携制御技術の開発である。現在はエージェントが独立して並列動作しているが、将来的には、役割分担・情報共有・優先度設定といった「メタ思考的」な仕組みが導入され、より洗練された協調型AIシステムへと発展していくと見られる。
次に想定されるのが、他社による同種の機能の追随と差別化競争だ。OpenAI、Anthropic、Google DeepMindなどの大手プレイヤーが、同様のマルチエージェント機構を実装する動きは時間の問題であり、独自の連携方式や専門分野特化型エージェントの開発が進む可能性がある。
さらに、将来的には教育、法律、医療といった分野への応用も視野に入るだろう。ただしそのためには、透明性の高いアルゴリズムと高い信頼性の担保が不可欠であり、社会実装には倫理・法制度面での整備も必要になることが想定される。
総じて言えるのは、Wide Researchのようなマルチエージェント機能は、「生成AIの第二段階」に向けた重要な兆候であるということだ。その真価は、今後の改良と実証の積み重ねによって初めて明らかになるだろう。
公式ブログ:https://manus.im/ja/blog/introducing-wide-research