アップル、AI強化へ本格投資 大型買収やデータセンター拡張に意欲

2025年7月31日、米アップルのティム・クックCEOは、AI分野での巻き返しを図るべく、大型買収やデータセンター投資などで支出を拡大する方針を明かした。
AI分野で出遅れのアップル、大型M&Aと設備投資で反転狙う
米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は決算発表後の電話会議において、AI領域への本格的な取り組みとして支出拡大の方針を明言した。
特に、データセンターへの設備投資の増強や、より大規模な企業買収の可能性に言及しており、同社の戦略転換が鮮明となっている。
その背景には、対話型AIやAIアシスタントの分野でマイクロソフトやグーグル(アルファベット傘下)が先行しており、アップルが後れを取っているという現実がある。
両社はAI強化に向けてそれぞれ850億〜1000億ドル規模の巨額投資を見込んでおり、生成AIを軸に覇権争いが激化する中で、アップルも追随せざるを得ない構図となっている。
これまでアップルは小規模な買収を中心にAI技術を内製化してきたが、クック氏は「ロードマップの加速につながるM&Aには非常にオープンだ。今年これまでに買収した企業は小規模だが、特定の企業規模にこだわっていない」と述べ、既に7社の小規模AI関連企業を買収済みであることを明かした。
さらに、同社の最高財務責任者(CFO)ケバン・パレク氏は、データセンターへの支出について「急激ではないが大幅に増加するだろう」と説明。具体的な金額は明かされなかったものの、これまで年間数十億ドルにとどまっていた投資額を今後引き上げる方向性が示された。
巨額投資に潜むリスク 独自戦略の転換が及ぼす影響とは
アップルの投資拡大は、AI分野における競争激化を象徴する動きであり、慎重な財務運営を続けてきた同社にとっては大きな転換点でもある。
これまでのアップルは、プライバシー重視や自社製チップなどの独自路線で差別化を図ってきた。そこに巨額投資とM&Aが加わることで、社内体制や文化に変化が生じる可能性がある。
一方で、大型買収には「統合の難しさ」も伴うと思われる。技術面だけでなく、人材や企業文化の融合も重要となる中で、アップルがこれまで避けてきた「外部取り込み」の道を進むことは注目に値する。
さらに、データセンター投資の増加には、インフラコストの膨張や電力需要の拡大といった課題も存在する。環境負荷への対応や、安定した電力供給の確保など、新たな課題に直面する可能性も否定できない。
とはいえ、アップルがAI戦略に本腰を入れることは、iPhoneやMacといった既存製品へのAI統合を加速させ、ユーザー体験の高度化につながると期待される。特にiOSへの生成AI機能搭載は、エコシステム全体に大きな波及効果をもたらすだろう。
今後は、アップルがどの企業を買収するのか、またその技術が製品にどう実装されるのかが、業界全体の注目を集めることになりそうだ。