人とAIが共創する音楽レーベル「油電MUSIC」設立 武愛の楽曲が第1弾に

2025年8月1日、音楽制作における人間とAIの共創を掲げた新レーベル「油電MUSIC(ゆでんミュージック)」が設立された。
第1弾アーティスト・武愛による楽曲リリースも発表され、AIを単なる代替でなく“創造のパートナー”と捉える革新的な試みに注目が集まる。
人とAIの創造性が交差する音楽レーベルが誕生
「油電MUSIC」は、AIを活用したハイブリッド音楽制作に特化したレーベルである。「油」は人間の創造性や感性、「電」はAIの計算力や処理能力を象徴しており、両者の融合による“共創型アート”の実現を目指して設立された。
AIを「人間の代替」ではなく「能力の拡張」と定義し、アーティストが持つ構想や感情に対し、AIが洗練された出力を加えるという役割分担のもと、より深く本質的な創造プロセスを追求していく。単にAIで音楽を生成するのではなく、アーティストの意図を起点とし、それを最大限に活かすツールとしてAIを運用する点が特徴だ。
レーベル第1弾となる楽曲「何が何でも二個ください」は、アーティスト・武愛(たけあい)氏が手がけたもので、8月8日にデジタルリリースされる予定だ。
武愛氏自身がコンセプト・構成・歌詞を手がけ、その創作意図に基づきAIを活用している。人間の直感とAIの再構築力を組み合わせることで、印象的な質感のポップソングが完成した。
楽曲では「どちらかを選べ」という現代社会の選択主義に対する反発と、「両方を望む」ことを肯定するメッセージが込められており、人間とAIの“両立”というテーマとも呼応している。
“共創型音楽”が切り開く新たな制作スタイルと産業の可能性
「油電MUSIC」の登場は、音楽制作における“人間中心主義”のパラダイムを再構築する起点となり得る。今後、AIを活用したクリエイティブ制作は音楽にとどまらず、映像・ダンス・美術など多ジャンルへと拡張されていく見通しである。
とりわけ、ライブ演出やインタラクティブな作品制作においては、AIが観客の反応を即時解析し、演出を動的に変化させるような取り組みも想定される。
また、若手アーティストの育成支援においても、AIは極めて有効なリソースとなるだろう。作曲・作詞・編曲といった工程において、人的なリソースが乏しい段階でも一定水準の作品制作を可能にする点は、音楽教育のあり方にも影響を及ぼす可能性がある。
ただし、業界全体としては、法的整備やルールの確立が急務と考えられる。AIが関与した創作物の著作権帰属、報酬配分、倫理的ガイドラインの明文化など、制度面での遅れが新しい創作スタイルの成長を阻害するリスクも想定される。
最終的には、「AIとどう向き合うか」が個々のアーティストの哲学とスタイルに委ねられていくと思われる。共創が前提となる未来において、人間の創造性が“主役”であり続けるためには、技術と感性のバランスを問い続ける姿勢が求められるだろう。
※AI:Artificial Intelligence(人工知能)の略。ここでは人間の創造プロセスを支援・再構築するための計算処理技術全般を指す。