AI活用は進むも開発者の信頼後退 Stack Overflow調査で明らかに

2025年7月29日、米開発者向けQ&Aサイト「Stack Overflow」が、年次調査を発表した。
全世界の約5万人を対象に実施されたこの調査で、AIツールの活用は広がる一方で、開発者の間ではその信頼性に対する懸念が強まっていることが明らかになった。
開発者の過半数がAIを日常利用 信頼度は急落
Stack Overflowの2025年版「Developer Survey」によると、開発者の84%がAIツールを業務に組み込んでいる、または導入を予定しており、前年の76%から伸長した。
プロの開発者に限ってみると、実に51%が「毎日AIを使用している」と回答している。
AIの利用が拡大している一方、開発者の信頼は逆行している。
AIツールの正確性に対する満足度は2024年の43%から、2025年には33%に低下。逆に「信頼していない」との回答は31%から46%へと増加した。
「非常に信頼している」と答えたのはわずか3%にとどまり、ベテラン層では2.6%にまで落ち込んでいる。
主な不満点としては、「ほとんど正しいが完全とは言えない、AIが提示するソリューションへの対処」が66%と最多で、続いて「AI生成コードのデバッグに時間がかかる」が45%に上った。
AIの導入が進んだことで、その不完全さも認識されるようになった形だ。
ツール選好の観点でも、「Visual Studio Code」(75%)や「Visual Studio」(29%)といった既存のIDE(※)が根強い人気を保っており、「AIファースト」を掲げる新興開発環境の普及は限定的だ。
加えて、「Vim」「Notepad++」などの軽量エディタも依然として一定の支持を集めている。
※IDE(統合開発環境):プログラムの記述、デバッグ、テストなどを一括して行えるソフトウェア開発支援ツール。Visual StudioやEclipseなどが代表例。
AIは補助的ツール止まりか 今後の信頼回復が鍵に
AIツールの活用が開発者の間で急速に進んでいる点は、初学者や非エンジニア層にとって、コーディングの敷居を下げる役割を果たすと考えられる。
プロトタイピングや簡易なスクリプト作成のスピードが向上し、業務負荷の一部をAIが肩代わりすることで、開発者がより創造的な作業に集中できる土壌も生まれつつあると言える。
一方で、調査結果から明らかなように、信頼性の問題が急速に表面化している。
特に「一見正しそうだが誤っているコード」を生成する点は、開発現場で深刻なトラブルを引き起こすリスクを内包しており、むしろ手戻りやデバッグ工数の増加という形で生産性を下げる要因にもなりかねない。
AIツールは今後も進化を続けるが、「正確さ」や「説明可能性」といった信頼性の確保が急務となるはずだ。
現段階では、AIはあくまで補助的な立場にとどまり、開発者自身がアウトプットを精査・修正する役割から解放されることは難しいと見られる。
したがって、当面は「信頼できる助手」としての立ち位置が維持されるだろう。