楽天モバイルとWoltが提携 飲食業界のAI・DX展開を加速へ

2025年7月31日、楽天モバイルとWolt Japanは、AIを活用して飲食業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する業務提携に向けた基本合意書を締結した。
両社の強みを融合し、飲食店の運営効率化や顧客体験の向上を目指す。
飲食業界の現場課題に対応 AI活用で運営効率と顧客満足向上へ
楽天モバイル株式会社とWolt Japan株式会社は、飲食業界におけるAI・DX推進を目的とする業務提携に関して、基本合意書を交わした。
これにより、両社の法人向けサービスを連携させ、加盟飲食店における業務課題の解決を支援する枠組みを構築する。
楽天モバイルはこれまで、通信インフラとAI技術を融合した法人向けソリューションを展開してきた。一方、Woltは飲食デリバリーの現場で多数の加盟店と接点を持ち、地域経済の活性化を目指す企業である。
特に注目されるのは、データドリブンな経営判断の支援である。両社はAIによる分析に基づいた業務改善提案を行い、従来の勘や経験に依存していた現場運営をアップデートさせることで、業務効率と顧客満足度の双方の向上を狙うとみられる。
提携で進む飲食業界の再編 効率化の裏に残る雇用と格差の課題
今回の提携は、飲食業界におけるAI導入の加速化を象徴する動きとして注目される。
楽天モバイルとWoltの協業により、現場のオペレーションが効率化され、特に人手不足に悩む中小飲食店にとっては実利のある支援策となる可能性が高い。
一方で、その急速なデジタル化が雇用構造や業界の勢力図に影響を与える可能性も否定できない。自動化による業務の省力化は、人材不足への対応策となる一方で、現場労働の一部を代替し、非正規雇用を中心に職域が縮小する懸念もある。
さらに、両社による「プラットフォーム化」が進行することで、データやオペレーションの集中管理が可能となる反面、加盟店の自主性が薄れる可能性も否定できない。飲食店にとっては利便性と引き換えに、業務の標準化・画一化というジレンマに直面する局面も出てくるだろう。
とはいえ、今回の提携は業界全体の構造変革を促す起爆剤となりうる。単なる業務の効率化にとどまらず、AIが経営戦略の中核を担い始めたことで、飲食業界における競争軸そのものが変容しつつある。
今後の展開によっては、AIが意思決定や人材戦略においても中心的な役割を果たし、従来の業態や働き方に再定義を迫る可能性もあるだろう。
利便性の追求と引き換えに、創造性や地域性といった“人間らしさ”の価値をいかに守り、両立させていくかが、これからの飲食業界に突きつけられる本質的な課題である。