AIブームで電力需要急増 米電力各社が設備投資を大幅拡大

2025年7月30日、米電力大手アメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)は、AIによる電力需要拡大を受け、5年間の設備投資計画を従来の540億ドルから700億ドル(約10兆4200億円)に引き上げる方針を明らかにした。
電力需要の急伸により、同様の動きが他社にも広がっている。
AEPが設備投資を160億ドル増額 AI起因の電力需要が背景に
米電力会社アメリカン・エレクトリック・パワー(AEP)は、AI技術の普及によって急増する電力需要に対応するため、今後5年間の設備投資計画を大幅に引き上げる方針を示した。
これまでの計画額540億ドルから700億ドルへの増額で、約160億ドルの上積みとなる。
AEPは現在、オハイオ州やテキサス州など11州で事業を展開しており、2029年までに24ギガワット相当の新規電力供給契約を結んでいる。
そのうち18ギガワットはデータセンター向けであると、同社が30日に公表した決算資料で明らかにされた。
ビル・ファーマン最高経営責任者(CEO)は、投資家向けの電話会見において「45年のキャリアで、これほど急ペースの需要拡大は見たことがない」と述べ、AI関連施設による負荷増を強調した。
同日、ルイジアナ州やテキサス州などで事業を展開するエンタジー(Entergy)も、設備投資計画を370億ドルから400億ドルに引き上げたことを発表した。
アーカンソー州での新規案件獲得が主因であるとしながらも、具体的な顧客名は非公表にとどまった。
AI特需で電力インフラが加速 家計・中小企業に影響懸念も
データセンターなどAI関連施設の拡大により、送電網や発電所といったインフラ整備が急務となっている。
AEPやエンタジーの投資増額は、これに対応するものであり、電力会社にとっては業績押し上げ要因となる可能性がある。
特に生成AIや大規模言語モデルを支えるインフラは高負荷かつ常時稼働を前提とするため、莫大な電力量を必要とする。
今後もクラウド事業者や半導体メーカーなどが各地に拠点を構える中で、各電力会社には柔軟かつ迅速な供給体制が求められる。
ただし、高額な設備投資のコストを電気料金として回収する場合、家計や中小企業への影響は避けられない。価格転嫁が過度に行われれば、住民や規制当局からの反発も予想される。
AI産業の成長は地域経済にも波及効果をもたらす一方で、公共インフラの整備と費用分担のバランスが問われる局面に入っている。
米国内では今後も同様の投資が各社で相次ぐと見られ、電力業界の再編や新たな規制議論にもつながる可能性がある。