アンビックマイクロがIPO初日61%高 省電力AI半導体に高評価

2025年7月29日、米国の半導体企業アンビックマイクロがナスダックに上場し、初日の終値は公開価格を61%上回る38.53ドルとなった。
超低消費電力のAI向け半導体技術が評価され、調達額は9600万ドル(約143億円)に達した。
アンビックマイクロ、初値高騰でIPOに成功 省電力AI技術が評価
超低消費電力のAI半導体を開発する米アンビックマイクロが、2025年7月30日にIPO(新規株式公開)を実施した。
公募価格24ドルに対し、初日の終値は38.53ドルと61%上昇。一時的な取引停止措置が2度適用されるほどの高いボラティリティを見せた。
調達額は9600万ドルに達し、完全希薄化後の時価総額は約7億4100万ドルとされている。
同社には、ソフトバンクグループ傘下である英アーム・ホールディングスが出資しており、IPOを後押しする形となった。
同社が開発する半導体は、従来の製品と比べ最大5倍の省エネ性能を誇るという。
これは、特にスマートウォッチなど、バッテリー容量が制約となるウェアラブル端末においてAI機能を搭載可能にするとしている。
CTOのスコット・ハンソン氏は「第1フェーズでは顧客が使うデバイスのバッテリー寿命を延ばすことに取り組んでいた。しかし重要なのは同じバッテリーの寿命で、かつては実現不可能だったAI機能搭載をできるようにすることだ」と述べた。
次世代デバイスに広がる可能性 市場拡大と赤字継続のはざまで
アンビックマイクロの技術は、今後のウェアラブル市場やIoTデバイスの進化を加速させる可能性がある。
同社は将来的に、ARグラスなどに大規模言語モデル(LLM)を実装するための電力効率の高いチップ提供も視野に入れている。生成AI時代の新インフラとして期待できそうだ。
しかし、財務面では慎重な見方も必要そうである。
提出資料によれば、2025年3月までの3カ月間で830万ドルの純損失を計上しており、前年同期と比較しても赤字が続いている状況だ。
一方で、売上高は前年の1520万ドルから1570万ドルに微増しているため、成長が軌道に乗るかどうかが今後の焦点となるだろう。
省電力性能を軸としたAI半導体市場の拡大が予測される中では、同社のようなスモールチップベンダーへの注目度は高まりそうだ。
特にスマートデバイス市場では、処理性能よりもバッテリー最適化が差別化要因となりつつあり、アンビックの技術が鍵を握るとみられる。
ただし、今後の市場獲得には大手半導体メーカーとの競合や量産体制の確立といった課題も控えていると考えられる。
今後は、量産体制と資金調達を両立させ、競争力を維持できるかが鍵となるだろう。