インドネシア財務省が仮想通貨税制改正 海外取引税率は5倍に

2025年7月30日、インドネシア財務省が仮想通貨取引税率を8月1日から大幅に引き上げることを発表したと、ロイター通信が報じた。国内・海外取引所双方に適用され、東南アジア最大級の市場で規制強化の動きが鮮明となっている。
国内は0.21%、海外は1%に増税 市場規模拡大で監視を強化
インドネシア財務省は、国内取引所での仮想通貨売却時税率を従来の0.1%から0.21%に、海外取引所利用時は0.2%から1%に引き上げる。特に海外プラットフォームに対しては税率が5倍となり、資本流出抑制と国内市場の安定化を目的とした施策とみられる。
背景には、同国の仮想通貨市場が急速に拡大している現状がある。2024年の取引額は前年比3倍の650兆ルピア(約5.8兆円)に達し、利用者数も2,000万人を突破。株式市場の投資家数を上回る規模となった。こうした成長に伴い、政府は税収確保と取引監視の両立を狙っているとみられる。
制度改正では、買い手に課していた付加価値税(VAT ※)は廃止される一方、マイニング事業のVAT税率は1.1%から2.2%へ倍増。課税の重点を取引利益と採掘事業に置き直した格好だ。
国内大手のトコクリプト取引所は制度変更を歓迎しつつも、企業が対応するための調整期間確保を要望している。同社は仮想通貨が商品から金融資産へと法的地位を変えたことを評価し、海外取引への監視強化を支持する立場を示した。
※付加価値税(VAT):商品の販売やサービス提供に対して課される間接税。インドネシアでは取引ごとに課税され、事業者が徴収して国に納付する仕組み。
高税率が投資行動を左右 日本の税制議論にも波及の可能性
新税率は、インドネシア株式市場のキャピタルゲイン税率を上回る水準であり、短期売買や海外取引への影響は避けられないとみられる。高頻度取引を行う投資家にとっては、国内外のプラットフォーム選択や取引頻度の見直しが迫られる可能性が高い。
一方で、税制強化が市場の健全化や透明性向上につながるとの見方もある。政府の監視体制強化は不正取引やマネーロンダリングの抑止に寄与し、長期的には機関投資家や国際的な取引参加者の信頼を高める可能性がある。
こうした動きは、日本の仮想通貨税制議論にも影響を与えかねない。日本では7月30日、業界団体の日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が、2026年度税制改正に向けた要望書を金融庁に提出。現行の総合課税(最高約55%)から20%の申告分離課税への移行を最優先事項としており、保有形態や銘柄を問わず一律適用を求めている。
インドネシアの事例は、高成長市場での税制強化が投資家心理と市場構造をどう変えるかを示すケースとなり、日本の制度設計においても参考材料となる可能性がある。