クリスティーズ傘下、不動産取引に暗号資産導入 高級物件市場の新潮流

2025年7月24日、米クリスティーズ・インターナショナル・リアル・エステートが暗号資産のみで完結する不動産取引部門を新設したと、米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。デジタル通貨による高級住宅購入の実用化が現実味を帯びてきた。
ビバリーヒルズで94億円取引も 暗号資産による購入が本格化
ロサンゼルスに本拠を置くクリスティーズ・インターナショナル・リアル・エステートは、暗号資産による高級不動産取引を専門とする部門を立ち上げたという。従来の銀行や金融仲介を介さず、P2Pでの資産移転を可能にする体制を整備した。
この取り組みを率いるのは、同社CEOのアーロン・カーマン氏。すでに同氏はビバリーヒルズで6500万ドル(約94億2500万円)の邸宅を暗号資産で取引した実績を持つ。他にも、1億1800万ドルの「ラ・フィン」や、映画『インビジブル・ハウス』でも知られる1795万ドルの「インビジブル・ハウス」などを暗号資産対応ポートフォリオに含める。
新設部門は法務・財務・暗号資産の専門家を擁し、所有権の移転や法的整合性を担保しながら銀行口座を介さないトランザクションを実現する。富裕層によるデジタル資産活用のニーズを背景に業界の関心が高まりつつある。
アーロン・カーマン氏は、今後5年以内に米国の住宅不動産取引の3分の1以上が暗号資産で行われる可能性があると見通す。特に高いプライバシーを求めるハイエンド層にとって、銀行の審査や為替の煩雑さを避けられる点は大きな魅力だ。
暗号資産が高級不動産市場を変える 現実資産との橋渡しが次のステージへ
今回の取り組みは、富裕層向け不動産市場におけるデジタル資産活用の先駆けとして象徴的な意味を持つ。今後5年以内に米住宅取引の3分の1が暗号資産に置き換わるという見通しには議論の余地もあるが、少なくとも高価格帯物件の一部では実現に近づくと見られる。
鍵を握るのは、法制度と技術インフラの整備である。スマートコントラクトによる所有権移転の自動化やステーブルコインを用いた決済の導入が進めば、価格変動リスクの低減と信頼性の確保が両立しやすくなる。また、主要国が暗号資産の法的位置付けを明確にすることで、資産としての信用力が高まる可能性もある。
取引手段としての暗号資産が実需と接続され始めた現在、高級不動産という「現実資産」との橋渡しが市場拡大の試金石となる。この流れが拡大すれば、美術品、航空機、さらには土地開発といった他の実物資産にも応用される展開が視野に入ってくるだろう。