東京都がAI戦略を初策定 都政全体での活用と産業支援を明示

2025年7月25日、東京都はAIと向き合う基本的な考え方と活用方針を示した「東京都AI戦略」を公表した。
行政の効率化と都民サービスの向上を両立させ、2050年の都市像実現を後押しする狙いだ。
都政の全業務にAI活用へ 2050年ビジョンの実現を後押し
東京都が策定した「東京都AI戦略」は、AIを都政運営と都市成長の中核に据える内容だ。行政課題や労働力不足への対応、都民の生活の質向上を狙いとして掲げている。
同戦略では、2050年に目指す都市像「QOLの実感できる社会と持続的に成長する東京」の実現に向けて、AIを徹底的に利活用すると明記された。
具体的には、都庁内の業務を3分類し、利活用の構想が整理された。
(1)申請や通知、窓口対応などの都民サービス、(2)補助金審査やインフラ管理などの都民サービス関連業務、(3)文書作成・分析などの職員内部業務が対象となる。
これらの領域において、AIを用いた自動化・最適化が進められる。
さらに、都は民間や大学との連携によってAIの社会実装を推進し、イノベーションの創出や人材育成を強化する。中小企業支援やスタートアップとの協業、データ利活用基盤の整備など、都内の産業競争力強化にも踏み込んだ。
都市DXの加速装置となるか 期待とリスクが交錯
東京都AI戦略は、全国の自治体の中でも先進的な事例となる可能性が高く、自治体DXのモデルケースとしても注目できる。
AIの導入によって職員の負担を軽減し、より戦略的な業務へのリソース転換が可能になることは、都民サービスの即時性・個別最適化の向上につながるだろう。
また、スタートアップや中小企業にとっても、行政主導のAI活用が市場創出の追い風となる可能性がある。公的な信頼を背景とした実証フィールドとして東京が機能すれば、産業集積や人材流動の活性化も期待できる。
一方で、リスクも無視できない。
AIの判断がブラックボックス化すれば、行政判断の透明性が損なわれるおそれがある。プライバシー侵害やセキュリティ脅威への対策も不可欠だ。加えて、民間との連携においては、技術進化のスピードと行政手続きの乖離をどう埋めるかという課題も残る。
持続可能なAI運用体制を構築できるかどうか、また、具体的な実装フェーズにおいて、透明性と信頼性をどう担保するかが、今後の課題となるだろう。