子供の成果物から所見を自動生成 ClassCloudのMikulakがAI特許取得

2025年7月24日、株式会社Mikulak(本社:東京都)は、同社が開発する教育アプリ「ClassCloud」に搭載されたAIによる所見自動生成機能について、日本国内で特許を取得したと発表した。
成果物を基に所見を生成する技術は、教育現場の働き方改革と教育の質向上の両立を後押しする動きとして注目できる。
ClassCloudが所見自動生成の特許取得 AIで成果物を分析し、教員の作業を支援
Mikulakが開発・提供する「ClassCloud」は、授業支援と校務支援を一体化したクラウド型教育アプリであり、ホワイトボード形式で児童の成果物を蓄積・可視化し、学習履歴をもとにした教員の業務支援機能を備えている。
今回特許を取得したのは、児童の成果物をもとにAIが所見を自動生成する技術だ。
この機能は2023年6月からClassCloud上で提供されており、成果物をワンタップで読み込むと、クラス全体の所見をAIが一括で生成する。
教員はその草案を確認・編集するだけでよく、従来に比べ文書作成の負担が大幅に軽減される。
Mikulakは、この機能の意義を「教員が子供と向き合う時間を作る」ことに置いており、効率化と教育的配慮の両立を狙う。
実際に導入した教員からは、「以前の1割程度の時間で作業が終わるようになった」「自分が見落としていた子供の活動を把握することができた」といった声が寄せられている。
同機能が実装された初期に、「所見は先生が0から書くべき」「AIに手伝ってもらったら先生が子供を見取らなくなる」といった否定的な見解も見られたが、現在では、実務を知る教員からの肯定的評価が広がっている。
今回の特許の権利範囲は「所見」にとどまらず、「成果物からの個人評価」「単元内の変容の評価」といった教育評価全般にも拡張可能な構成となっており、Mikulakは今後、分割出願によるさらなる権利範囲の拡大を目指すとしている。
評価業務の再定義とAI活用の拡張 教育現場に問われる使いこなし
この機能の主なメリットは、教員の文書作成負担を軽減させることで、観察や対話など、人間にしかできない本質的な教育活動へとリソースを再配分できる点にあると言える。
また、過去の記録をもとにした所見が生成されるため、見落とされがちな児童の変化に気づきやすくなる利点も大きい。
一方で、AIの生成物に過度に依存するリスクや、教員自身の観察眼が薄れる懸念も根強い。
所見の質を左右するのは、AIの出力ではなく、それをどのように活用し、編集し、児童理解に還元するかにかかっていると考えられる。
今後は、特別支援教育や個別最適化指導といった領域にも応用が進むと予想できるが、そのためには教員がAIを単なる「時短ツール」ではなく、教育的な対話の起点として捉えることが求められるだろう。
業務効率化の成果だけでなく、評価の在り方そのものに変革をもたらす可能性が出てきた今、教育現場にはAI活用の“質”が問われていると言える。