米上院議員3名、デルタ航空のAI運賃に懸念表明 個人情報と価格操作に疑義

2025年7月22日、米上院の民主党所属議員3名が、デルタ航空によるAI運賃設定計画に懸念を示した質問状の内容を公表した。個人情報の扱いや価格の不透明な上昇に対する懸念が中心となっている。
AIによる個別運賃設定に米上院議員が質問状提出
米上院議員3名が2025年7月21日付で、デルタ航空のCEOエド・バスティアン氏に質問状を送付し、AIを活用した航空運賃の個別設定に対し強い懸念を表明した。
質問状は翌22日に公表され、ルーベン・ガレゴ、マーク・ワーナー、リチャード・ブルーメンソル各氏が署名している。
質問状では、デルタの現行および計画中の個別運賃設定方法が、消費者のデータプライバシーに深刻なリスクをもたらすと指摘。米国の家庭が生活コストの上昇に苦しむ中、消費者が「支払いたい」と考えるレベルまで運賃を引き上げる可能性も問題視された。
デルタはAI運賃設定に関して、収入管理技術を提供する企業フェッチャーと提携し、2025年内に国内線航空券の20%にAI活用を計画している。質問状はこれを踏まえ、個別の消費者心理を分析して価格を操作する懸念を示した。
またデルタ幹部は過去に、投資家向け説明で「人々が基本運賃に関してプレミアム商品に支払う考えがある金額の予測に基づいて運賃を設定できる」と述べていたことも明らかになった。これは顧客ごとに異なる運賃設定の可能性を示唆する内容である。
これに対しデルタは、「個人情報などに基づいて顧客に対して個別に提供するものはない」と反論し、「ダイナミック・プライシング(価格変動制)の運賃は30年超前から使われており、顧客全体の需要などさまざまな要因に基づいて運賃が変動するものの、特定の消費者の個人情報に基づいているわけではない」と強調した。
また、AIにより手動プロセスが効率化され、全顧客に一貫した運賃とオファーの提供が可能になると説明している。
AI価格戦略の行方 利便性か差別的価格か
デルタ航空のAIを活用した運賃設定計画は、航空業界の価格競争力向上や効率化に資する一方で、消費者側にとっては価格の不透明化や個人情報の取り扱いに対する不安を増幅させる可能性がある。
今後、AIによる個別運賃設定が普及すれば、消費者ごとの購買力や過去の行動データに基づく価格操作が進む恐れがある。これは、家庭の経済的負担増大や市場の公平性を損なうリスクを孕むため、規制当局や消費者団体の監視が強まることも予想される。
一方で、AI導入は航空会社の収益最適化に寄与し、価格変動制の精度向上や手作業削減に伴うコスト削減が見込まれる。これにより、航空券の価格競争力が高まり、結果として消費者にメリットをもたらす可能性もある。
ただし、価格設定プロセスの透明性確保と個人情報保護の両立は大きな課題であるため、デルタをはじめとする航空各社は、AI導入時に倫理的・法的枠組みを整備する必要があるだろう。
消費者の信頼を維持しつつも、技術革新を推進できるかどうかが今後の焦点になると思われる。