xAI、サウジアラビア企業2社とAIデータセンターリース協議開始

現地時間2025年7月16日、米実業家イーロン・マスク氏が率いるAIスタートアップxAIが、サウジアラビアの企業2社とデータセンター容量のリースに向けた協議を行っていることが、ブルームバーグの取材で明らかになった。
中東の安価な電力と政治的支援を活用し、AIインフラを拡張する狙いがある。
xAI、複数のサウジ企業とデータセンターリースで初期交渉
関係者によれば、xAIは現在、サウジアラビアの企業2社と初期段階の協議を進めているという。
うち1社は政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)の支援を受けたAI企業「ヒューメイン」であり、同社はxAIに対して数ギガワット規模の演算容量を提供する提案を提示している。
もう1社は、200メガワットの規模で既にデータセンターの建設を開始しており、規模こそ小さいがより早期の利用が見込まれているという。
いずれの交渉も非公開で行われており、関係者は匿名を条件に情報を提供した。
xAIはいずれの施設においても、自社でデータセンターを所有するのではなく、スペースをリースしてAIモデルの訓練や運用に必要な演算処理を行う見通しである。
AI開発における膨大な計算資源の確保は、競争優位性の鍵を握る要素とされている。
電力需要増で中東がAI拠点に 短期・長期の戦略が交錯
ヒューメインが提示する数ギガワット級の提案は、xAIにとって魅力的な長期戦略の一環となり得る。
しかし、ヒューメインは過去に発表した複数のインフラ整備計画を未着工のまま抱えており、実際のリソース提供には数年を要する可能性が高い。
一方、既に施設建設が進行中のもう一つの企業は、xAIにとって短期的な計算需要を補う実用的な選択肢として注目されている。
AI業界における需要急増に対応するには、即時利用可能な演算インフラの確保が不可欠である。
こうしたxAIの戦術について、イリノイ大学のキャスリン・ハフ氏はブルームバーグ・テレビジョンの取材に対し「非常に理にかなっている」とし、データセンターと電力供給のコストのバランスを取る上で有効だと評価した。
一方で懸念となるのは、地政学的リスクだ。
サウジアラビアは政治的に不安定な中東地域に位置しており、国際的な人権問題や外交摩擦が突発的に生じる可能性がある。
AIインフラという戦略的資産を、こうした地域に依存することは、リスク分散の観点から慎重さが求められる。
地政学的リスクがありながらも、サウジアラビアのようにエネルギーコストが低く、政府支援を得やすい地域は、今後AIインフラのハブとして台頭する可能性がある。
xAIの戦略は、こうした地域との連携を通じて、グローバル規模の計算資源ネットワークを築く布石と見られる。