富澤商店、生成AIとMicrosoft 365で社内ナレッジ共有を実現

2025年7月16日、製菓・製パン材料を扱う富澤商店は、IT企業Jarminalと提携し、Microsoft 365の機能と生成AIを活用した社内ナレッジ共有システムを構築したと発表した。
新人教育や店舗支援の効率化を通じ、業務全体の生産性向上を目指す。
生成AIとMicrosoft 365で社内情報共有を高度化
富澤商店は、全国に88店舗を展開する製菓・製パン専門店であり、取り扱う商品は1万点超、自社開発のレシピも8000件以上に及ぶ。
同社ではこれまで、こうした豊富なナレッジが本社主導で部門ごとに分散管理されており、現場との情報格差が課題となっていた。
特に、新人教育や日々の業務に必要な情報が十分に共有されていなかったため、ベテランスタッフに問い合わせが集中し、対応負荷が偏る状況が続いていた。
こうした課題を解決するため、富澤商店はITコンサル企業Jarminalと連携。
Microsoft 365の標準機能に加え、最小限のAzure Open AIとRAG(※)技術を活用した生成AIチャットボットを開発し、社内ナレッジに自然言語でアクセスできる環境を整備した。
同社は「Copilot Studio」を用いて運用体制を内製化するとともに、AIによる問い合わせ対応や履歴分析を通じて業務改善に活用。
生成AIを安全に活用するためのセキュリティ対策や、社員へのIT研修も包括的に実施した。
※RAG(Retrieval Augmented Generation):生成AIが外部データベースから情報を検索・参照しながら回答を生成する技術。
現場主導のAI活用が浸透 人手不足対応とDX推進のモデルに
富澤商店が構築した生成AIを活用したナレッジ共有システムは、本社と店舗間に存在していた情報格差を是正し、現場スタッフが必要な情報への即時アクセスを可能にする。
とりわけ1万点を超える商品群や8000件以上のレシピといった膨大な知見を抱える企業にとって、情報の整理と即時取得は業務の根幹を支える要素といえる。
ベテラン社員への問い合わせ集中という構造的課題を緩和できる点は、属人化のリスク軽減に寄与するだろう。
生成AIの導入により、ナレッジへのアクセスが標準化・平準化され、現場の教育コストや対応時間の削減も期待できる。
一方で、AIに依存するナレッジ共有は、情報の正確性やアップデート頻度が不十分である場合、誤情報の拡散を招きかねず、今後のアップデートも必要だ。
また、店舗スタッフのITリテラシー格差も課題となりうるため、研修の定着と継続的な教育の仕組みが求められる。
富澤商店のような中堅企業によるAI活用事例は、特に小売・サービス業界において一つのモデルケースとして注目される可能性がある。
とりわけ、Microsoft 365の標準機能と最小限のAI構成で運用可能な点は、費用対効果の面でも再現性が高い。
従来IT投資に慎重だった中小企業にとっても導入ハードルを下げる要素となるだろう。