HCLTechとOpenAIが提携 企業のAI導入を加速する新戦略

2025年6月30日、インドのIT大手HCLTechは、OpenAIと複数年にわたる戦略的提携を結んだと発表した。両社は生成AIを中心とした企業向けソリューションの展開を強化し、グローバル市場でのAI導入を加速させる計画だ。
HCLTech、生成AI活用で企業変革を支援
HCLTechは、今回の提携を通じてOpenAIの先進的なAIモデルと自社のAIエンジニアリング技術を融合させる。これにより、顧客企業は生成AIの導入をより短期間かつ大規模に進めることが可能になるという。
同社は「AI Force」「AI Foundry」「AI Engineering」などのAIアクセラレーター(※)を活用し、AI導入の計画策定から統合、ガバナンス、チェンジマネジメントまでライフサイクル全体を支援。これらにより、企業の業務変革や顧客体験・従業員体験の向上、新たな成長機会の創出を目指すという。
さらに、HCLTech社内でも「ChatGPT Enterprise」とOpenAI APIの活用を進め、従業員にエンタープライズグレードの生成AIツールを提供することで、生産性向上と内部業務の最適化を図るとしている。
※AIアクセラレーター:AI技術の迅速な開発・実装を支援するツール群やプラットフォームの総称。
生成AI導入の加速とガバナンス強化が鍵に
HCLTechとOpenAIの戦略的提携は、生成AIの実用化を加速させる強力な推進力となるであろう。HCLTechの持つエンジニアリング力とOpenAIの先進的なAIモデルの融合により、企業は短期間で大規模なAI導入が可能になると期待される。
特に「AI Force」や「AI Foundry」といったAIアクセラレーターの活用は、AIプロジェクトの立ち上げから運用まで一貫して支援する仕組みを整え、顧客の負担を軽減する設計になっている。
さらに、HCLTech自身が社内で「ChatGPT Enterprise」を利用することで、生成AIの社内適用モデルを確立し、クライアント企業への展開に説得力を持たせる効果も期待できる。
一方で、生成AI導入には、膨大なデータを扱う際のプライバシー保護やセキュリティ確保が不可欠だ。規制環境が厳格化する中で、ガバナンスの強化や倫理的配慮を怠れば、企業は法的・社会的リスクを負うことになる。
企業はこうした課題に対応するため、HCLTechの支援を通じてガバナンス体制の強化を迫られると見られる。
今後、同様の提携が他のIT大手にも広がる可能性があり、AI市場の競争はさらに激化するだろう。