三井住友FG、シンガポールにAI新会社設立 元MS幹部がグローバル戦略を主導

2025年7月8日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、シンガポールにAIソリューション事業会社を設立すると発表した。CEOには元マイクロソフトアジア社長のアーメッド・ジャミール・マザーリ氏を迎え、グループ全体のAI戦略を加速させる狙いだ。
AI新会社が狙うグローバル市場での競争力強化
SMBCグループは新会社を通じ、企業向けAIエージェント(※)関連ソリューションの開発と導入支援を展開する計画だ。アジア市場を起点に、将来的には法人顧客へのサービス提供を拡大し、グローバルでの競争力を高める構想を描く。
同社は現行の中期経営計画で8000億円規模のデジタル投資を掲げ、そのうち500億円を生成AI領域に投じる方針を示してきた。今回の新会社設立は、その戦略の一環であり、AIを中核とした業務効率化やサービス高度化を推進する役割を担う。
CEOに就任するマザーリ氏は、マイクロソフトアジアで培ったAI・クラウド事業の知見を背景に、SMBCの「AIトランスフォーメーション」をリードする。グループのエグゼクティブアドバイザーも兼任し、グローバル人材の獲得やデータインフラ整備を進める方針だ。
※AIエージェント:対話型AIシステムの一種で、ユーザーの指示に応じて自律的にタスクを実行する人工知能技術。企業のカスタマーサポートや業務効率化に活用される。
グローバル展開の武器と課題
三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)がシンガポールにAI新会社を設立したメリットは、グローバル市場におけるAI活用の主導権を握る足がかりになる点にある。特に、アジア市場を拠点とすることで、新興国のデジタル化ニーズを取り込み、法人顧客向けサービスの拡充が期待できる。
また、元マイクロソフトアジア社長であるマザーリ氏のリーダーシップは、AI・クラウド領域での知見や人脈を活用し、優秀な人材獲得や技術基盤構築において大きな武器となるだろう。
加えて、グループ全体のデジタル投資戦略と連動しているため、組織全体のAI導入スピードが加速する可能性も高い。
一方、デメリットとしては、グローバルでのAI人材確保競争が極めて激しい現状が挙げられる。GoogleやOpenAI、アリババなどのビッグテックも優秀なAI人材に巨額の資金を投じており、SMBCが金融分野で独自色を出せるかは未知数だ。
また、AI導入による業務効率化が既存の業務プロセスや雇用構造にどのような影響を及ぼすかについて、社内外で慎重な調整が求められる。
さらに、国際的なデータ活用体制を構築する際には、各国のデータ主権やプライバシー規制への対応が不可欠であり、技術面だけでなく法規制面でのハードルも高いと考えられる。