電通G、AI人材1000人で横断組織「dentsu Japan AIセンター」設立 ”AIネイティブカンパニー”への進化狙う

2025年7月7日、電通は国内グループ4社と連携し、AI開発に特化した横断組織「dentsu Japan AIセンター」を新設した。約1000人の専門人材を集結させ、全社視点でのAI活用を加速する体制を構築。企業変革の中核にAIを据える狙いだ。
電通GがAI活用の全社戦略を本格始動
電通は、グループ横断のAI開発組織「dentsu Japan AIセンター」の発足を発表した。参画するのは、電通本体に加え、電通デジタル、セプテーニ・ホールディングス、電通総研、イグニション・ポイントの4社。各社のAI関連人材を結集し、合計で約1000人規模の専門部隊となる。
新センターは、社内業務効率化から顧客企業へのソリューション提供までを担う6つの専門ユニットで構成される。
業務領域は多岐にわたり、マーケティングやクリエイティブ領域におけるAIツールの開発に加え、電通グループが独自に保有する生活者データを活用し1億人規模のペルソナを再現するAIモデル「People Model」の拡張なども進める。
さらに、生成AIを活用したAIエージェント(※)の導入支援もメニューに含まれ、外部企業の業務変革を技術面から支える体制を整える。
設立の背景には、近年「AIネイティブカンパニー」への移行を進める企業の増加がある。一方で、日本国内ではAIの導入が依然として部門単位にとどまり、全社的な戦略・体制が不十分なケースが多いと電通は指摘する。
その課題意識を踏まえ、電通はAIを「企業変革の中核」と位置付け、人的リソースや技術資産を集約する形で本センターの立ち上げに至った。
※AIエージェント:利用者の指示や目的に応じて自律的に行動し、業務遂行を支援するAIシステム。会話型UIや自動推論、意思決定機能などを備える。
全社横断型のAI戦略が鍵に 顧客提供価値と内製力強化の両立へ
dentsu Japan AIセンターの設立は、広告・マーケティング業界におけるAI活用の深化を象徴する動きだ。AIネイティブな業務体制への移行は、単なる業務効率化にとどまらず、顧客企業の変革支援という新たなビジネス機会をも生むと期待される。
特に注目されるのは、社内外の活用を両輪とする運営方針である。グループ内では、組織全体でのデータ活用の最適化やツールの共通化が進み、属人的な運用からの脱却が可能となる。一方で、顧客向けにはAIモデルやエージェントの導入支援を通じ、より戦略的なサービス提供を強化できる。
ただし、導入には課題も残る。AI開発には高精度なデータ基盤と、継続的な改善体制が不可欠であり、業務領域ごとのニーズに応じた設計が求められる。横断組織であっても、各ユニットが現場とどう連携するかが成否を分けるだろう。
今後は、AIの民主化がさらに進む中で、業界全体におけるベストプラクティスの創出と共有が重要になる。電通グループの動向は、国内他企業にとっても戦略構築のモデルケースとなる可能性がある。