パクソス、欧州で「USDG」正式ローンチ MiCA準拠の米ドル連動ステーブルコイン

2025年7月1日、米ステーブルコイン企業パクソス(Paxos)は、欧州連合(EU)で米ドル連動型ステーブルコイン「Global Dollar(USDG)」の提供を開始した。EUの暗号資産規制「MiCA」に準拠し、フィンランド金融監督庁の監督下で発行される。
USDG、欧州で始動 Ethereum・Solanaなどに対応
パクソスは「USDG」をEU域内の個人・法人向けに正式リリースし、ステーブルコイン市場への欧州展開を本格化させた。発行体はフィンランド法人「Paxos Issuance Europe OY」で、MiCA(※)に基づく電子マネー機関(EMI)として登録済みだ。
「USDG」は完全裏付け型で、流通量に応じた米ドル建て資産が欧州の銀行に保管される。これにより、1:1の価値維持と高い流動性が保証される仕組みである。
対応チェーンはEthereum、Solana、そしてKrakenのイーサリアムL2「Ink」となっており、多様なエコシステムで利用可能だ。
同コインは既にロビンフッド、クラーケン、アンカレッジ・デジタルなどが参加する「Global Dollar Network」の基軸通貨として採用されている。今後、MastercardやFiservの参画も予定されている。
パクソスの戦略責任者ウォルター・ヘッサート氏は「MiCAに完全準拠したUSDGの欧州展開は、消費者保護の面でも大きな一歩だ」と強調した。
※MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation):EUにおける暗号資産市場の包括的な規制枠組み。発行体やサービス提供者に厳格な登録・監督義務を課す。
USDGの欧州展開の展望の予測
USDGの欧州展開は、規制対応型ステーブルコインの新たな潮流を形成する可能性がある。MiCAの施行により、未準拠のステーブルコインが市場から排除されるシナリオも現実味を帯びてきているため、パクソスは先行者利益を得る可能性は高いと考えられる。
ただし、その優位性は短期的かもしれない。
USDCなど既存大手がMiCA準拠の新規発行体を設立すれば、競争環境は再び均衡に向かうだろう。
また、EU域内の金融機関やフィンテック企業が規制順守型ステーブルコインを基盤にしたサービスを開発する動きが加速する可能性がある。これにより、デジタル決済やクロスボーダー送金の効率化は一段と進むだろう。
ただし、地政学的リスクや為替変動、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の台頭といった外部要因が、USDGの成長に影を落とす可能性も否定できない。
総じて、USDGは欧州市場における規制準拠モデルの試金石になると思われるが、持続的な競争優位を確保するには、域内の規制・経済圏に即したサービス展開を可能にし、USDGの持続性を確保することが不可欠となるだろう。