アニメ著作権をブロックチェーンでトークン化 「YOUR RIGHTS」がファンと作品の新たな関係構築へ

2025年7月1日、アニメプロデューサー木村誠氏が率いるBLUE RIGHTSとブロックチェーン開発のFungibleX(旧X2Y2 Japan)は、新会社「YOUR RIGHTS」の設立を発表した。
著作権をトークン化し、ファンが企画や利益分配に参加できる新モデルを日本で本格始動する。
アニメ著作権を「デジタル所有証明書」として販売
今回設立が発表された「YOUR RIGHTS」は、アニメ作品の著作権の一部を「デジタル所有証明書(※)」としてブロックチェーン上で発行・販売し、その収益を制作資金に充てるビジネスモデルを展開する。
保有者は単なる出資者にとどまらず、制作方針に関する投票などを通じて企画に参加できる。さらに、完成作品から生まれる収益の一部を、保有割合に応じて受け取る権利も付与されるという。
発表資料では、NFTプロジェクト「NEO TOKYO PUNKS」原案のアニメ企画「UTOPIA」が先行事例として紹介された。
同作品では、ソニーグループ開発のイーサリアムレイヤー2「Soneium(ソニューム)」上で1万5000枚のNFTが発行され、保有者はアニメ化権の一部を所有し、ストーリー設定への投票権や利益分配への参加権を得る。
この新たな仕組みにより、ファンが作品づくりに深く関与できる環境が整いつつある。
FungibleXは今回の取り組みを皮切りに、「ファンエンゲージメント向上」や「RWA(Real World Asset)トークン化」分野への展開も進めている。
※デジタル所有証明書:ブロックチェーン技術を活用し、著作権や所有権などの権利をデジタルデータとして証明・記録する仕組み。改ざんが困難で、第三者による透明な取引が可能。
今後の展望、トークン化で業界構造が変わる可能性
「YOUR RIGHTS」が提供する「著作権トークン化ソリューション」は、コンテンツ業界における資金調達とファン参加の在り方を大きく変える可能性がある。
従来のアニメ制作は制作委員会方式に依存しており、資金回収までに長い時間を要するケースが多かった。しかし、トークンを活用し、資金を事前にファンから直接集められれば、より迅速かつ柔軟な制作体制が構築できると思われる。
また、ファンが企画初期から関与し、作品の成否に対して経済的な関心を持つことで、コミュニティ主導の熱量あるプロジェクトが生まれることが期待できる。
ただし、著作権の分割所有がもたらす権利調整の複雑化や価格変動を伴うトークンのリスク、法的な枠組みの整備など、クリアすべき課題も多い。
今後の制度設計と実務オペレーションの構築が、業界全体のデジタル化を牽引する試金石となりそうだ。